拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「近頃見慣れない男が会社をうろついていて、彼女といるところも見ています」

 どういうこと⁉ 私は知らない男性と会社で話したことなんてないのに……もしかして智景さんのことを言っているの⁉

「違います、彼は……」

 説明しようとして、口ごもった。智景さんの素性を勝手にべらべらしゃべるわけにはいかない。下手なことを言えば彼に迷惑がかかる可能性もあるのだ。
 智景さんの存在を煙たく思う人物は、子会社にもいると聞いていた。もし松井常務がそのひとりだとすると、智景さんの足を引っ張るネタを与えてしまうかもしれない。

 一瞬ためらった隙を突かれる。

「常務、産業スパイの可能性も視野に入れるべきかと」
「違っ……」
「とりあえず内部調査を行うことにする」

 否定しようとしたが、松井常務の声がさえぎった。

 この後はなにを言っても『調査の結果が出てから』としか言われず、まったく聞く耳を持ってもらえない。

 自宅謹慎を言い渡された私は、やってきた警備員に連れられ常務室から出る。閉まるドアの隙間から、長澤さんの口もとが薄っすら持ち上がるのが見えた。