拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 どういうこと!

「キャビネットには鍵がかかっていたはずだ。鍵の場所は常務しか知らないのに、いったいどうやって開けたんだ」
「鍵なんてかかっていませんでした! 最初から開いていたんです」
「じゃあその手に持っているものはなんなんだ」
「あ……」

 自分の手元を見て血の気が下がる。これじゃあまるで私が勝手に鍵を開けて、ファイルを持ち出そうとしたみたいじゃないか。

「ち、違いますこれは――」

 説明しようとした私を手のひらで遮ると、長澤さんは常務を見た。常務は厳しい表情で口を開く。

「詳しい話をお聞かせ願おうか」

 言いながらこちらに近づいてきた常務の向こう側で、長澤さんがドアを閉めるのが見えた。

 それからは『事情聴取』という名の尋問だった。

「秘書課の女性から頼まれただけです」「鍵はかかっていませんでした」「機密用ファイルだとは知りませんでした」

「秘書課からはだれも連絡していない」「どうして鍵を持っていたんだ」「知らなかったことを証明できるのか」

 堂々巡りの問答に疲れてきた頃、突然長澤さんが常務に思いも寄らないことを告げた。