拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

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 考えがまとまらないまま休日が終わり、月曜日の朝を迎えた。

 智景さんがいない朝食は味気なく、食パンをコーヒーで流し込んで、いつもより早く家を出た。

 昨晩から色々なことを考えすぎたせいで、脳がぱんぱんになってぼうっとしてしまう。それなのにひとりでいると同じ事ばかりに思考が捕らわれてしまうので、とにかく仕事に没頭しようと思った。

 今週が締切のものはもちろん、少し先で必要となる資料を作ったり、他部署から回ってきた依頼を積極的に引き受けたりしているうちに、あっという間に八時間がすぎる。

「やだ、もうこんな時間……」

 腕時計を見ると、いつのまにか定時を過ぎていた。

 そろそろ帰ろうかなあ……。

 集中と入れ替わりに、疲労感が押し寄せてきた。さすがに週始めからがんばりすぎたかもしれない。
 今日はこれくらいにしておこうとパソコンの電源を落としたとき、内線が鳴った。

「はい。総務課滝川――」
『秘書課です。今から言うファイルをすぐに第一会議室まで持ってきてください』

 名乗り終わるより早く、早口でまくしたてられた。電話口の女性はかなり焦っているようだ。急ぎの案件だとわかったので、メモを取りながら要件だけを聞いた。