拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「そんなに薄着で窓を開けていたら、湯冷めしてしまうぞ?」
「あ……」

 肩に掛けられたのは彼の羽織だ。
 彼は私の手を握り、自分の頬に押し当てた。

「ほら、やっぱり。相変わらず冷え性だな」

 さらりとした肌から温もりが伝わってくる。いつの間にか腰の後ろに彼の手が添えられ、あと十センチ近づいたら、抱きしめられているのと変わらなくなる。慌てて彼の体から離れようとした瞬間、甘い香りが鼻をくすぐった。

「この匂い……」

 お香の香りだ。夕食の前に嗅いだものと似ているけれど、ほんの少し違う気がする。凛とした涼やかな香りだ。

 彼は私の腰から手を離し、ジャケットのポケットからなにかを取り出した。

「はい、これ」

 差し出されたのは、白地に薄紅色の花柄が刺された小さな巾着袋だ。さっきの香りの正体はこれだとすぐにわかる。