拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 そろそろ上がらないと。そう思いながら立ち上がろうとした瞬間、思わず「あ!」と声が出た。

 智景さんもこのお風呂に入るのよね⁉

 それはそうだ。ここにバスルームはひとつしかない。わかりきっていたことなのに、どうして今の今まで、そのことが頭の中で結びつかなかったのか……。

 彼のマンションのゲストルームにはバスルームがついている。ビジネスホテル暮らしのような状態だったので、入浴後に顔を合わせることは一度もなかった。

 どうしよう……。

 湯上りの姿を異性の前にさらすことが、こんなに緊張することだなんて思わなかった。
 だとしても、いつまでもバスルームにこもっているわけにはいかない。私が出ないことには彼がここを使えないのだ。
 意を決して浴室から出た。

「お待たせいたしまし……あれ?」

 恐る恐るリビングスペースに顔を出したけれど、智景さんの姿が見当たらない。
 ベッドルームをノックだけでもしてみようかと思ったとき、ソファーのサイドテーブルにメモが置いてあるのが見えた。

「え!」

 思わず声が出た。そこにはメモ書きとは思えないほど丁寧な文字で『用があるので少し出てきます。先に休んでおいて』と書いてあった。

「なあんだ、いないのか……」

 一瞬で全身から力が抜け、思わずソファーに腰を落とした。