部屋に戻ると途端に緊張が戻ってきた。
ホテルとは思えないほど広々としているし、ベッドルームだって別々だ。居候暮らしとなにも変わらない。そう自分に言い聞かせるのに、どうしたってふたりきりだということを意識してしまう。
「どうした、美緒?」
「きゃっ」
急に横から顔をのぞき込まれて、小さな悲鳴が飛び出した。彼が目をしばたたく。
「驚かせてごめん。さっきからぼうっとしているようだけど大丈夫か?」
「い、いえ。大丈夫です! 私の方こそ大きな声を出してしまいすみませんでした」
失礼な態度を取ってしまったことを謝ると、頭をぽんぽんと軽く撫でられた。
「いや、気にしないでいい。朝から色々あって疲れただろう? お風呂でしっかり温まっておいで」
「は、はい……」
お風呂に入れば頭がスッキリして、この妙な感覚が消えるかもしれない。「お言葉に甘えて」と急ぎ足でバスルームへ向かった。
広々としたバスルームには、総ヒノキの大きな浴槽にたっぷりとお湯が張られていた。ほどよい湯加減とヒノキの香りに昼間の疲れがじわじわと溶け出すようで、あまりの心地よさについ長湯をしてしまった。



