「香道では、香りを鑑賞することを『聞香』というんだ。これはその専用の香炉だよ」
「聞香……知りませんでした」
智景さんはさすがというべきだろう。旧東雲財閥の創始者は、華族の称号を持っていて、歴代当主の中には公家華族との姻戚関係を結んだ者もいると聞いたことがある。さかのぼれば皇族の血を引いているかもしれない彼は、私のような一般人とは根幹から違うのだ。
「どうかした? 美緒」
「いえ……どういうものなのかなあと思って」
今さらながら彼との生まれの違いを考えさせられていたとは言えず、目に入った聞香炉に視線を移す。
「この中に灰を入れて、そこに火を起こした炭を埋めて、そこに香木を置いて香りを聞くんだ」
「ほら、こんなふうに」と言って彼が聞香炉を両手に持ち、顔を近づける。ただのふりだとわかっていても、流れるような所作につい見惚れてしまう。
ぼうっとしていると、やってきた店員に「よろしければお試しになられますか?」と言われた。
どうしよう。興味はあるけど……。
「せっかくだからやってみたらいい。時間なら心配しなくて大丈夫だよ」
智景さんの勧めに背中を押されてうなずいた。
「聞香……知りませんでした」
智景さんはさすがというべきだろう。旧東雲財閥の創始者は、華族の称号を持っていて、歴代当主の中には公家華族との姻戚関係を結んだ者もいると聞いたことがある。さかのぼれば皇族の血を引いているかもしれない彼は、私のような一般人とは根幹から違うのだ。
「どうかした? 美緒」
「いえ……どういうものなのかなあと思って」
今さらながら彼との生まれの違いを考えさせられていたとは言えず、目に入った聞香炉に視線を移す。
「この中に灰を入れて、そこに火を起こした炭を埋めて、そこに香木を置いて香りを聞くんだ」
「ほら、こんなふうに」と言って彼が聞香炉を両手に持ち、顔を近づける。ただのふりだとわかっていても、流れるような所作につい見惚れてしまう。
ぼうっとしていると、やってきた店員に「よろしければお試しになられますか?」と言われた。
どうしよう。興味はあるけど……。
「せっかくだからやってみたらいい。時間なら心配しなくて大丈夫だよ」
智景さんの勧めに背中を押されてうなずいた。



