拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「美緒?」

 心配そうに声をかけられ、慌てて「すぐに書きます」とペンを取る。次の瞬間、用紙の一番下に印字されているホテルの名前が目に飛び込んできた。

『ホテルKAGETSU 森月庵(しんげつあん)

 ここ……! あの有名な香月リゾートが、嵐山にある旧華族の別荘を買い取って作ったと話題の高級旅館だわ!

 香月リゾートは、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばし続けている業界トップのホテルグループだ。
 どこかで見たことがあると思ったら、オープンの頃にテレビや雑誌でよく取り上げられていたのだ。京都の高級老舗料亭が協賛しているということも、話題のひとつだった。噂では、三年先まで予約でいっぱいだという。

 京都に来ると決めたのは今朝だったというのに、いったいどうしたらこんな人気宿が取れるのだろう。ついさっき彼が口にした言葉となにか関係があるのかもしれない。

「智景さんが連絡された相手の方って……」
「ああ。香月リゾートの社長だよ。(しょう)さんとは実家同士が近所でね。子どもの頃からの付き合いなんだ」
「そう……だったのですか……」