拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 車から降りて鳥居をくぐる。境内に入るとすぐに淡い花の香がふわりと鼻をくすぐった。ちょうど梅の見ごろだ。
 参道のすぐ隣が梅苑になっているようで、清らかな梅の香りに誘われるように足を向けかけたが、まずは参拝からだと思い直し、本殿を目指して参道を真っすぐに進んだ。

三光門(さんこうもん)』と名付けられた門の色鮮やかで美しい彫刻に見惚れているうち、目前に本殿が現れた。

「わぁ……!」

 拝殿の左手前で咲き誇る紅梅に、思わず感嘆の声が漏れた。

「これがかの有名な、飛梅(とびうめ)の子孫とされている梅だね」
「飛梅……」

『自分がいなくても、春になったら花を咲かせることを忘れないで』といった趣旨の和歌を、光子先生のお手本で書いたことは記憶に新しい。

 二度と戻って来られないほど遠い西国の地へと旅立つ前に、和歌を贈るほど梅の木を可愛がっていた。そんな道真のことを梅の木も慕っていて、何百キロもの距離を一夜で飛び越えたという。

 遠く離れ離れになった後に再会できるなんて……。

「うらやましい……」

 ぼそっと口から漏れた声にはっとする。