拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 みたらし団子を食べた後、二寧坂(にねいざか)を抜けたところで、駅から清水寺まで来たときと同じVIP用ハイヤーに出迎えられた。
 いつの間に⁉ と驚きながら乗り込む。

 ハイヤー会社の名前が東雲グループのものだったので、彼の手配だとは察してはいたけれど、普通のタクシーとはホスピタリティが比べものにならない。まるでVIPになったかのような錯覚を起こしてしまいそうなのを戒めるために、できるだけ姿勢を伸ばして後部座席に座っている。

 ハイヤーは鴨川沿いを北上していき、やがてふたつの川が合流する三角地帯が見えてきた。車窓からそれを眺めながら、なぜか胸がきゅっと締めつけられた。

 どうしてこんな気持ちになるのだろう。
 別離の寂しさのような、郷愁に似たせつなさのような。自分でも説明のつかない感情だ。

 飽きることなく車窓を眺めつづけているうちに、大きな鳥居が見えてきた。

北野(きたの)天満宮だわ!」

 北野天満宮は、学問の神様として有名な菅原道真(すがわらのみちざね)を祭っているため、毎年多くの受験生や学生が合格祈願に訪れる。

 私の実家近くには、政敵の陰謀で道真公が左遷となった場所に建てられた太宰府(だざいふ)天満宮がある。
 そのため、小さなころから道真公に親しんできたため、いつか機会があれば一度こちらにもお参りしたいと思っていた。