寝室の中には、天蓋(てんがい)つきの大きなベッドがあった。

 3、4人くらいは、悠々と寝られそう。



 薄暗い部屋の中でも、ベッドの中央に寝ている人影は見えたので、静かに近づく。

 横向きに寝ていたのは、やはり怜央さんで、体の前に回ると赤い瞳と視線が(まじ)わった。




「あ、怜央さん、ただいまです」


「…遅い」


「え?」


「早く帰ってきてって言ったじゃん」


「ご、ごめんなさい。いろいろ家事をしてたら時間がかかっちゃって…」




 むすっと、あからさまに不機嫌な顔をしている怜央さんに、びっくりしつつ謝る。

 すると、怜央さんは上半身を起こして、手を伸ばしてきた。




「わっ?」




 腕をつかまれて引っぱられ、ひざをつく形でベッドに乗り上げてしまった。

 足がつきそうだったので慌ててくつを脱ぐと、怜央さんはさらに、私の腰へ腕を回して、ぐいっと抱き寄せる。

 その動きに足がついていかなかったせいで、ぼすっと、思いっきり怜央さんの胸に倒れ込んでしまった。


 怜央さんの声が、近くから聞こえる。