耽美なる箱庭



 乃々が20歳なる。

 俺はこの日を、待ちわびていた。

 誰にロリコンと罵られようが、どうでもいい。藺月千佳の人生は、泗水乃々が生まれてからスタートしたといっても過言ではない。

 生まれたばかりの乃々と出会った日、俺は天啓を受けたような感覚に陥った。


── 「この天使は、俺が守る」


 幼いながらに、そう誓ったのだ。

 汚い世界には似つかわしくない乃々は、幾度も悪意に晒されて傷つけられた。守ると誓ったくせに、俺の力が及ばないばかりに辛い目にも遭わせてしまった。

 あのクソ犯罪者の男を殺そうと思ったこともあったけれど、俺が捕まれば乃々が泣く。

 どんな手段を使っても、乃々を自分のものにすると決めていた俺は、ある時から囲うための〝箱庭〟について考えるようになった。

 良くも悪くも、乃々には才能があって、人を惹きつける。

 羨望、嫉妬、好意、悪意。

 様々な感情をぶつけられることに、乃々が耐えられないことはわかっていた。だから隠してしまおうと画策した。

 幸いなことに、いい物件も見つかり、乃々を囲うための箱庭が完成してしまった。

 あとは、俺に依存させて、20歳になるのを待つだけだ。

 そうして、現在、目論見通りに事が進んでいる。


「(計画は、全て順調だな……)」


 乃々の世界は、この箱庭だけでいい。