耽美なる箱庭





 わたしって、ぽんこつなのかも。


「風邪ひくから、服着て寝ろって言ったよな?」


 おでこに冷却シートを貼られている。寒気と頭痛と戦いながら体温を測ると38度。看病してくれていた千佳くんが、目を三角にした。


「……ごめんなさい」

「一週間は安静。仕事も禁止。キスも禁止」

「えっ!」


 あれから2週間。夜は毎日キスの練習をして、やっと慣れてきたのに禁止って……。

 しょんぼりと毛布の中に隠れると、わたしの頭を千佳くんがなでなでしてくる。

 あやしてるつもりかな? もう子どもじゃないよ。


「ちーくん」

「なんだよ、ねずみちゃん」

「ちがうもん。ねずみはちゅーだもん」

「……今の、もっかい言って」

「ねずみはちゅーだもん?」


 なんで復唱させられたんだろう。

 満足気に口角を上げた千佳くんが、ベッドの端に腰かけて、わたしのおでこにキスを落とした。


「これで我慢な、ねずみちゃん」

「むっ」


 わたしじゃなくて、冷却シートへのキスじゃん。

 唇をふにふにと親指で触ってくる千佳くんに、せめてもの反撃だと指をぱくりと食べた。