耽美なる箱庭



 幼なじみの距離を保ったまま、数年。

 なんの変化もなく過ごしていたけど、不幸は重なるもの。わたしが高校生に上がって、季節が変わる時期。

 ──ままとぱぱが、事故に遭って亡くなった。


「うちの子になろう、ののちゃん」


 塞ぎ込むわたしの後見人になってくれたのは、藺月家で。義務も責任もないのに、自分の子どものように愛してくれた。

 わたしが生きてこれた理由に、少なからず藺月家の存在がある。感謝してもしきれない。

 高校を卒業する頃、千里くんがフランスの有名ハイブランドの専属デザイナーに抜擢された。


「わたしのために、夢を諦めないで。ひとりでも大丈夫だよ」


 心配性な2人は誘いを断り残ろうとしたけど、わたしはいつまでも甘えるのが嫌で、夢を追いかけてほしいと伝えた。

 それでも渋る2人に、千佳くんは「俺が乃々と残る」と告げたことで、ふたりきりの同居生活が、幕を開ける。

 わたしが、外出も他者との交流も拒んだからか、千佳くんは一軒家を買った。

 誰にもみられない箱庭のような家。


「どうして、ついていかなかったの? わたしのこと置いていってもよかったのに」

「……好きなやつと、離れたくないからな」

「ふうん、そっかぁ……」


 わたしじゃない誰かを、まだ好きなんだ。

 あの日の罪悪感や責任感は、わたしにだってある。

 千佳くんが好きな人といれるよう、恋が実るまでは幼なじみとして、利用されるくらいがちょうどいい。


 ────おわりが来るまで、傍にいさせて。