マイナスの矛盾定義




この10年で変わったことは沢山ある。


皆にも変化は訪れている。




――――あの人にも。



『ちょっと聞いてよアリスちゃん!最近陽から連絡来るようになったんだけど!あいつ死んだんじゃなかったわけ!?結構深く刺したのに!ていうか敵であるアタシに連絡してくるってどういうことだと思う?よく連絡してこれるなって思うんだけど!……え?落ち着けって?落ち着いてらんないよ、今度食事に誘われたんだよ!?何のつもりだと思う?』




――――あの人にも。



『お前、たまにはこっち帰ってこいよ。リバディーの食堂もリニューアルオープンしたから一緒に飯食わねぇ?…2人でだよ。…あ?諦めるわけねぇだろうが。人妻上等』



――――あの人にも。



『ねーねーアリスちゃん、最近返信してくんないのどーいうこと?…は?面倒臭い?ふうん。あ、そ。じゃあ次会った時は携帯チェックするから早く戻ってきてね?僕に返信するのは面倒とか言って他の奴には返信してたら怒っちゃうよー?……だーかーら、会いたいって言ってんだけど?気付けよ、馬鹿』



――――あの人にも。



『アリス…助けてくださいまし……バズ君の悪戯の頻度が上がってきていましてよ……この前なんか蜘蛛の玩具をいきなり凄い速さで投げてきて…。え?フォックス?今もクリミナルズにいましてよ。なんだかんだ気に入ってらっしゃるようですわ』



――――あの人にも。



『今度そちらに行きますね。会えない日数が積み重なれば積み重なるほど君への恋情も積もっていくので、正直抑えきれないんです。…愛してますよ』



――――あの人にも。



『ねぇお母さん!お父さんどうにかなんない?愛が重くて超うざい!この前も組織にわざわざプレゼント持ってきたんだよ?恥ずかしいし!事あるごとに見学に来るのも止めてほしい…!』



――――あの人達にも。



『おい、たまには顔を見せに来い。そして土産を持ってこい。悔しいが、ニーナがお前に会いたがってる』


『エリック、アリスさんとなら代わってください。……あ、アリスさん?実は今度犬を飼うことになったんですが、どんな名前を付けようか悩んでいて…』
机の上にあるのは、すっかり沢山の連絡先が登録された携帯。


色んな人が連絡してくるのだから困りものだ。



すっかり冷めてしまった珈琲に映る自分の前髪が跳ねていることに気付き直していると、ジャックが先程の私の言葉に対して少しの修正を加えた。



「待ってるだけじゃなく、繋げていってるんだよ。俺達の行動の何が次代へ繋がるか分からない。ただ1つ言えるのは、残したものは無くならない」



そう言われると、生きていることに意味があるように思えてくる。


勿論、意味なんて無くたって楽しいから生きてやるけど。



「絵本には続きがあってね?」



―――内緒話をするみたいに、ジャックは囁いた。












物語は繋がっていく。


変化と成長を伴いながら。


次へ次へと移行しながら。




たとえそれが――
マイナスから始まった物語でも。