マイナスの矛盾定義

「“物語というものには、終わりがなければいけない。その終わりというものには、誰かの変化が伴っている”」


「…何よ、それ?」


「アンナが書いてた絵本の一節だよ」


「あの子、絵本書いてるの?」


「うん。趣味でだけどね。俺だけに見せてくれた」


「何それ、狡いわね。私には見せてくれたことないのに」


「恥ずかしがってるんだよ」


アンナはジャックといると安心感を得られるようだし、ヤモといる時も楽しそうに笑ってる。


でも私相手だとどうも緊張するらしく、自分の趣味の話なんてしてくれない。


ジャック曰く“憧れの相手の前だと誰だって緊張するさ”ということらしいのだけど……私の何に憧れてるんだか分からないし、絵本書いてるなんて知らなかったわ。



物語には終わりがなければならない、か……。



「じゃあ、私たちの物語はもう終わりを待つだけね。あの頃が山場だとしたら、もう終わっちゃったもの」





―――あれから数えてみれば、およそ10年の月日が流れた。


私はあの国でブラッドさんとの子供を産んだ後、ジャックやアンナ、ヤモと旅を続けている。