今まで散々嫌がられてきたジャックとしては、私の一言でどうとでもなるブラッドさんが面白くて仕方ないのだろう。
「それで、ラスティ君の報告っていうのは何なの?」
コップ一杯の水を飲み終えたチャロさんは、ラスティ君に聞く。
「あーそれがね、報告ついでに作戦を練ろうと思って。これが研究所の地図なんだけど」
そう言いながらテーブルにいくつか印の入った地図を広げたラスティ君。
地図と言っても手書きだ。おそらくラスティ君が作ったんだろう。
「さすがですね」
「でしょー?広い施設だから地図くらいあってもいいのに全然ないからさぁ。自分でつくるしかなくて困ったよ」
「君の成果が研究を食い止めることに繋がると信じています」
「……えー…珍し。ぶらりんそんなこと言うんだね。信じてる、とか」
「長年一緒にやってきましたし、頼りにしているのは事実ですよ?」
何を今更、とでもいう風に言うブラッドさんに、ラスティ君は驚いているような照れているような、微妙な笑顔を口元に浮かべる。
ふと邪悪なオーラを感じてチャロさんの方を見ると―――にやけていた。
抑えているようだけどにやけていた。
この人まさか……。
「アリスちゃん」
チャロさんに疑いの目を向けていた最中、ラスティ君に名前を呼ばれる。
「僕さ。研究所にいる研究員は1人残さず殺そうと思ってる。もちろん中には生物実験にそこまで関わってない下っ端もいるんだろうけど、そいつらには構ってられない」
「…ええ」
「アリスちゃんにとって理想的な終わり方にはしてやれない」
そう言われて、ぞわっと鳥肌が立った。
私の知ってるラスティ君じゃないんだけど…。何?人格変わったの?偽物?
ラスティ君が私にとっての理想の終わり方が何であるかを考えてる時点で気持ち悪い。
「……貴方ってそこまで良い人だったかしら?」
思いっきり疑いの目を向けてやれば、ラスティ君はぷふっと吹き出した。
「えー何それ酷くなーい?」
いやだって…自分の目的が絡んでるって言っても、何でそこまで私に協力してくれようとするのか謎だし…。
何か企んでるの?と聞きたいところ。
と。その直後急にブラッドさんが私を引き寄せた。
「え、…どうしたの?」
「静かにしてください。誰かこちらに来ています」
私を隠すように抱きながら入口を睨むブラッドさん。
私には全く分からないけれど、何か気配がするのだろう。
「大丈夫だ。この足音は敵じゃない」
警戒するブラッドさんとは違い、ジャックは落ち着いた声音で言った。
数秒後、壊れるんじゃないかってくらいの勢いで扉が開かれた。
入ってきたのはジャックの言う通り敵ではなく――金髪碧眼の、狐顔の男。
「…フォックス…」
呟くと、ギロッと睨まれた。
「ここまで来るのに大変だった。先に船を降りるなら早くそう言え」
「ご、ごめんなさい」
「まったく…振り回してくれるな」
ズカズカ入ってきてドカッと私の近くの椅子に座ったフォックスは、リバディーのメンバーを品定めでもするかのようにじろじろ見る。
「へーこれがアリスちゃんの協力者のフォックスさん?」
ラスティ君もまた、フォックスに品定めするような視線を向けた。
「あんたがリーダー格か?」
「今日は僕が中心になって話を進めるから、リーダー格って言えばリーダー格かな?ちょうど良かったよ、全員揃ってから話した方が効率いいし」
ラスティ君はテーブルの上に何枚もの写真を並べ、みんなに見せる。
「今日話しに来たのはね、生物実験に使われてる生き物のこと。監視カメラの映像を使って全員の写真をつくってきた。勿論中には人間もいるよ」
写真の中には拘束されている生き物もいれば、比較的自由度の高そうな部屋の隅にいる生き物もいる。
人間もいれば、大型の動物もいる。
共通点は哺乳類中心ということくらいだ。
「爆破する直前に一気に逃がすのがベスト。でもそうなると人手が足りない。アランが手伝ってくれるらしいけど、最低でもあと3人必要」
「え……爆破?」
「研究所ごと爆破しちゃえばデータも残らなくて簡単でしょ?爆破する直前に実験体を逃がしてもらって、その後どーんってしちゃおうかなって」
愉しそうに目を細めるラスティ君は誰が見ても分かるくらい生き生きしている。
どーん、とか可愛い表現してる割にはしようとしていることが怖い。
「奇遇だな。おれも全ての研究所に爆弾を落とそうと計画していたところだ」
フォックスが信じられないことを言い出したので思わず「えっ」と短い驚きの声が出た。
そんなこと聞いてない。
「昔の軍の仲間に手伝ってもらえるし、今日本に置いている攻撃機も貸してもらうことになった」
「…それ大丈夫なの?貴方の国が日本を攻撃してるってことにならない?」
「研究所はどれも人目に付かない場所に立地している。一般人への被害は出さないし、国も研究所の存在は隠したがるはずだ。公になることはないだろう」
この人……やることが大胆というかなんというか。
それくらいの人だから、幼い私を研究所から脱出させることができたんだろうけど。
「じゃあ他の研究所の爆破はそっちに任せようかな。できれば一気に終わらせたいから、同じ日に全部の研究所を潰そう」
「同じ日とはいつだ?」
ラスティ君の提案に対して、フォックスが厳しい声で問うた。
「準備ができているなら今夜にでも作戦を開始すべきだ。アリスが完全体になるまでに残された時間ははっきりしていない。いつ完全体になってもおかしくはない」
「…確かにね。こっちの準備はある程度整ってるけど、そっちは?」
「準備なら仲間の協力を得て3日前に済ませてある」
「そりゃ頼もしいね」
にやにやし始めたラスティ君を見て、絶対この子“予想外の展開、萌えるな~”とか思ってるんだろうなと思った。
「今夜か……急だね。じゃあそれまでに犠牲者を救出する人を決めなきゃ。…あ、でも、アタシとアリスちゃんとブラッド君で3人にならない?」
チャロさんはジャックと協力することに少々抵抗があるのか、ジャックの名前を出さない。
「ぶらりんには約束があるし、来るとしても遅くなっちゃうよね。それにアリスちゃんもダメ。他にやってほしいことがあるんだ」
チャロさんにそう言って、ラスティ君は1枚の写真を取り出した。
丸い機械に沢山の線が繋がれている。
「それ、アリスちゃんのお父さんだよ」
「………え?」
「肉体はもう残ってないらしい。アリスちゃんのお父さんの意思だけがそこにある」
「意思……?」
「信じられない話だけど、研究員の1人を脅して吐かせた事実だよ。そのボールみたいなやつ、話し掛けたら喋るんだって。考える能力もある」
写真を持って固まってしまった。
もう何年も見ていない父親。
「それで、ラスティ君の報告っていうのは何なの?」
コップ一杯の水を飲み終えたチャロさんは、ラスティ君に聞く。
「あーそれがね、報告ついでに作戦を練ろうと思って。これが研究所の地図なんだけど」
そう言いながらテーブルにいくつか印の入った地図を広げたラスティ君。
地図と言っても手書きだ。おそらくラスティ君が作ったんだろう。
「さすがですね」
「でしょー?広い施設だから地図くらいあってもいいのに全然ないからさぁ。自分でつくるしかなくて困ったよ」
「君の成果が研究を食い止めることに繋がると信じています」
「……えー…珍し。ぶらりんそんなこと言うんだね。信じてる、とか」
「長年一緒にやってきましたし、頼りにしているのは事実ですよ?」
何を今更、とでもいう風に言うブラッドさんに、ラスティ君は驚いているような照れているような、微妙な笑顔を口元に浮かべる。
ふと邪悪なオーラを感じてチャロさんの方を見ると―――にやけていた。
抑えているようだけどにやけていた。
この人まさか……。
「アリスちゃん」
チャロさんに疑いの目を向けていた最中、ラスティ君に名前を呼ばれる。
「僕さ。研究所にいる研究員は1人残さず殺そうと思ってる。もちろん中には生物実験にそこまで関わってない下っ端もいるんだろうけど、そいつらには構ってられない」
「…ええ」
「アリスちゃんにとって理想的な終わり方にはしてやれない」
そう言われて、ぞわっと鳥肌が立った。
私の知ってるラスティ君じゃないんだけど…。何?人格変わったの?偽物?
ラスティ君が私にとっての理想の終わり方が何であるかを考えてる時点で気持ち悪い。
「……貴方ってそこまで良い人だったかしら?」
思いっきり疑いの目を向けてやれば、ラスティ君はぷふっと吹き出した。
「えー何それ酷くなーい?」
いやだって…自分の目的が絡んでるって言っても、何でそこまで私に協力してくれようとするのか謎だし…。
何か企んでるの?と聞きたいところ。
と。その直後急にブラッドさんが私を引き寄せた。
「え、…どうしたの?」
「静かにしてください。誰かこちらに来ています」
私を隠すように抱きながら入口を睨むブラッドさん。
私には全く分からないけれど、何か気配がするのだろう。
「大丈夫だ。この足音は敵じゃない」
警戒するブラッドさんとは違い、ジャックは落ち着いた声音で言った。
数秒後、壊れるんじゃないかってくらいの勢いで扉が開かれた。
入ってきたのはジャックの言う通り敵ではなく――金髪碧眼の、狐顔の男。
「…フォックス…」
呟くと、ギロッと睨まれた。
「ここまで来るのに大変だった。先に船を降りるなら早くそう言え」
「ご、ごめんなさい」
「まったく…振り回してくれるな」
ズカズカ入ってきてドカッと私の近くの椅子に座ったフォックスは、リバディーのメンバーを品定めでもするかのようにじろじろ見る。
「へーこれがアリスちゃんの協力者のフォックスさん?」
ラスティ君もまた、フォックスに品定めするような視線を向けた。
「あんたがリーダー格か?」
「今日は僕が中心になって話を進めるから、リーダー格って言えばリーダー格かな?ちょうど良かったよ、全員揃ってから話した方が効率いいし」
ラスティ君はテーブルの上に何枚もの写真を並べ、みんなに見せる。
「今日話しに来たのはね、生物実験に使われてる生き物のこと。監視カメラの映像を使って全員の写真をつくってきた。勿論中には人間もいるよ」
写真の中には拘束されている生き物もいれば、比較的自由度の高そうな部屋の隅にいる生き物もいる。
人間もいれば、大型の動物もいる。
共通点は哺乳類中心ということくらいだ。
「爆破する直前に一気に逃がすのがベスト。でもそうなると人手が足りない。アランが手伝ってくれるらしいけど、最低でもあと3人必要」
「え……爆破?」
「研究所ごと爆破しちゃえばデータも残らなくて簡単でしょ?爆破する直前に実験体を逃がしてもらって、その後どーんってしちゃおうかなって」
愉しそうに目を細めるラスティ君は誰が見ても分かるくらい生き生きしている。
どーん、とか可愛い表現してる割にはしようとしていることが怖い。
「奇遇だな。おれも全ての研究所に爆弾を落とそうと計画していたところだ」
フォックスが信じられないことを言い出したので思わず「えっ」と短い驚きの声が出た。
そんなこと聞いてない。
「昔の軍の仲間に手伝ってもらえるし、今日本に置いている攻撃機も貸してもらうことになった」
「…それ大丈夫なの?貴方の国が日本を攻撃してるってことにならない?」
「研究所はどれも人目に付かない場所に立地している。一般人への被害は出さないし、国も研究所の存在は隠したがるはずだ。公になることはないだろう」
この人……やることが大胆というかなんというか。
それくらいの人だから、幼い私を研究所から脱出させることができたんだろうけど。
「じゃあ他の研究所の爆破はそっちに任せようかな。できれば一気に終わらせたいから、同じ日に全部の研究所を潰そう」
「同じ日とはいつだ?」
ラスティ君の提案に対して、フォックスが厳しい声で問うた。
「準備ができているなら今夜にでも作戦を開始すべきだ。アリスが完全体になるまでに残された時間ははっきりしていない。いつ完全体になってもおかしくはない」
「…確かにね。こっちの準備はある程度整ってるけど、そっちは?」
「準備なら仲間の協力を得て3日前に済ませてある」
「そりゃ頼もしいね」
にやにやし始めたラスティ君を見て、絶対この子“予想外の展開、萌えるな~”とか思ってるんだろうなと思った。
「今夜か……急だね。じゃあそれまでに犠牲者を救出する人を決めなきゃ。…あ、でも、アタシとアリスちゃんとブラッド君で3人にならない?」
チャロさんはジャックと協力することに少々抵抗があるのか、ジャックの名前を出さない。
「ぶらりんには約束があるし、来るとしても遅くなっちゃうよね。それにアリスちゃんもダメ。他にやってほしいことがあるんだ」
チャロさんにそう言って、ラスティ君は1枚の写真を取り出した。
丸い機械に沢山の線が繋がれている。
「それ、アリスちゃんのお父さんだよ」
「………え?」
「肉体はもう残ってないらしい。アリスちゃんのお父さんの意思だけがそこにある」
「意思……?」
「信じられない話だけど、研究員の1人を脅して吐かせた事実だよ。そのボールみたいなやつ、話し掛けたら喋るんだって。考える能力もある」
写真を持って固まってしまった。
もう何年も見ていない父親。



