マイナスの矛盾定義

「きっと彼なら状況を教えてくれると思うの。何人来てるのか。誰が来てるのか」


「船内にいる敵はアランさんだけじゃねーぞ?」


「私だって、鍛えてきたわ。万一の場合でも戦える」



船にいる間隠れていたって、おりる時に見つかる可能性もある。


向こうの状況は把握しておいた方がいい。



シャロンは陽に痛み止めを飲ませながら、私を見た。



「そいつが本当のことを教えてくれるとは限らなくなぁい?」


「…いいえ。教えてくれるわ」


「なんでそんなこと言えるわけぇ?」


「………敵だけど、友達だから」



シャロンは無表情になった。


…怒っただろうか。


でも、言い訳のようになるが、クリミナルズは一人一人の自由を重視した組織だ。


一構成員の私が敵をどう思おうが、組織の不利益にさえならなければ問題ないはず。




「…でしたら、私もついていきますわ」



陽をじっと見守っていたキャシーが立ち上がり、私に向き直った。




「先ほどいた場所を見に行ってみましょう。早く行けば、まだいるかもしれません。…シャロン様。アリスは随分鍛えましたし、私も付いています。許可をくださいまし」




シャロンはしばらく黙っていたが、こちらを見ずにこくりと頷いた。



どこか拗ねているようにも見えたが、私たちはそれを許可と受け取り、すぐに部屋を出た。