そうこうしているうちにジャックのお薦めするパブに着いた。
入り口の両脇に樽が置いてある。
メニューが書かれた看板が立っているので見てみると、飲み物だけでなく食べ物のメニューも充実しているようだ。
「この店夜だと混雑してるから、昼時の今くらいがちょうどいいと思うよ」
店内には、ジャックの言う通り空いている席も十分あった。
比較的広く落ち着きがあり、立ち飲みの場やカウンター席、テーブル席もきちんと用意されている。
「Oh, Jack!!!」
「久しぶりだな!」
「ジャック!?最近顔見せねえから死んだのかと思ったぜ!」
「何してたんだよ」
パイプ煙草を吸うラフな格好をした40代、50代くらいの男性達が店に入ってすぐジャックの周りに集まってきて、笑顔でジャックの肩や背中を叩いている。
「It's been a while. 俺は元気ですよ、先輩方」
ジャックは懐かしそうに笑って返事をした。
男性達がジャックに付いてきた私たちに気付き、
「おぉ、そいつら友達か?」
「ジャックの知り合いならサービスするぜえ~」
「半額でご馳走してやんよ」
なんて気前の良いことを言いながらテーブル席まで案内してくれた。
その途中ジャックが陽に近付き、小声で話し掛ける。
「陽くん」
「んあ?」
「シャロン君に酒でも飲ませて眠らせてやってくれないか。最近疲れてるみたいなんでね」
「…まあ…確かにそうだな。移動の手続きで働きっぱなしの時もあるし」
陽はふむと頷き、早速シャロンに近付いて「一杯どうっすか?」なんてにかーっと笑いながら肩に腕を回し、2人で同じテーブル席につく。
その隣のテーブルでバズ先生とキャシー、フォックスの3人がメニューを見始める。
私とジャックはそのまた隣のテーブル席に座った。
シャロンのいる時にシャロンから離れることはあまりないから、少し変な気分だ。今はテーブル1個分離れている。
いつもなら隣に座るのに…と思ったところで、シャロンの近くにいることが当たり前になっていることに気付きブンブンと首を振った。
いつの間にか私は、シャロンの傍にいることに慣れてしまっているらしい。
こんなザマじゃだめね。いつかは……離れるのに。
メニューを見ながら、私は何気なくジャックに聞いた。
「お店の人とお友達みたいだけど、結構来てるの?もしかして意外と酒好きなのかしら?初めて会った時もバーにいたし」
「それなりに好きだよ。酒を飲む男は嫌い?」
「飲食の趣味にまでどうこう言うつもりはないわ」
「ふーん、お酒はいいのか。そういえば煙草は嫌いだったよね。やめさせるよ」
ジャックは先程のパイプ煙草を吸っている男性達に指で×のサインを送った。
男性達はハッと気付いたように煙草をしまい始める。
年下であるジャックの言うことを聞くってことは、それだけあの人達にとってジャックの存在が大きいってことなのかしら。
別に、この距離なら匂いがうつらないからあまり気にならないんだけど…まぁ、やめてくれるに超したことはない。
「この店にいるあなたの友達っておじさんばかりね」
「まぁ、職業柄ね。あの人達はたまに俺の手伝いをしてくれるんだ。俺ほど若いのはなかなかいないんじゃないかな」
「…もしかしてあの人達も犯罪者?こんな場所に集まって金を稼いでるの?それにしてはこの街、治安良さそうだけど」
「あの人達は一応そういうのからは引退してるよ。ここは若い頃色々とやらかした連中の集まる街でもある。…まぁ、そんなこと知らずに住んでる一般市民も多いけど」
ふーん、こんな街に隠れ住む連中もいるのね。
色んな生き方があるなぁ…と思いながらふと隣のテーブルを見ると、キャシーが盛り上がっていた。
「飲みますわよ~っ!」
「ちょっとキャシー。あなた未成年でしょ?」
「あら、犯罪組織の人間が法律を気にするなんてバカらしいと思いませんこと?」
この国でも未成年の飲酒は禁止となっている。
でも、私が言いたいのはそういうことじゃない。
「未成年の飲酒は脳萎縮を早くもたらす危険性があるわよ」
「…アリスってば、お堅いんですから…」
キャシーはしぶしぶといった様子でグラスをテーブルに置いた。
こういう時は素直だ。
そして、ちらりと横の黙って座っているフォックスを見て、口を尖らせた。
「ていうかフォックスさん、無愛想すぎませんこと?もうちょっと楽しそうにしてくださってもいいんですのよ」
「別に、あんたらと必要以上に馴れ合うつもりはない」
「冷たいこと。まぁ、この組織に入ったばかりですしそうすぐ馴染めないのも当然ですわよね。…何か盛り上がる話題はありませんかしら」
うーん…と難しい顔で考え始めるキャシーと、その様子を少々鬱陶しそうに見ているフォックス。
更にその様子を見ている私は、そのうちフォックスもこういうキャシーを面白く感じてくるだろうと予感した。
無自覚だろうけど、キャシーは相手を自分のペースに巻き込むのが上手い。
しつこいくらい絡んできても許せてしまうのは、悪気ない純粋な行動のためだ。
おかしな子よねぇ。
「そういえば、アリスってあの方とはどういうご関係だったんですの?」
「へ?」
急に私に話を振ってきたので間抜けな声が出てしまった。
「目元にホクロがあって茶髪の…左の目が前髪でほとんど隠れてる男性ですわ」
「アランさんか」
私より先に、陽がポツリと言った。
「へぇ、あの方アランって名前なんですのね。………ってアラン!?“あの3人”のアランですの!?どうりでお強いはずですわ!」
…なんでキャシーがアランのことを聞いてくるんだろう。
キャシーとアランが対面したのって、私の知る限りじゃあの闇取引の場でだけのはずなんだけど…。
私たちの間に何を感じ取ったと言うのか。
「別にどういう関係でもなかったわよ。ていうか、フォックスはそんな話題興味ないでしょ。もっと別の話をしたらどうなの」
「あら、照れてますの?珍しい」
あぁもう、聞いちゃいないわね。
この中じゃ知ってるのは陽くらいだけど一応告白された身だし、ここであいつの話をされるのは…なんというかむず痒い。
近しい人間にこういうことを聞かれるのは、変な感じがするものね。
「…あいつかぁ」
シャロンがぼそっと放った一言でゾクッと寒気が走った。
シャロンは運ばれてきたお酒を飲みながら、なんとも不気味な笑顔を浮かべている。
そういえば、シャロンも一度アランを見たことがあったわね…。
怖いからその表情やめてほしい。
「…あ、あなたどういう話題が好きなの?」
キャシーは話題を変える気がないようなので、フォックスに直接聞いてみた。
フォックスはお酒をちょっとずつ飲みながら答える。
「おれは…この組織のことが気になるな」
入り口の両脇に樽が置いてある。
メニューが書かれた看板が立っているので見てみると、飲み物だけでなく食べ物のメニューも充実しているようだ。
「この店夜だと混雑してるから、昼時の今くらいがちょうどいいと思うよ」
店内には、ジャックの言う通り空いている席も十分あった。
比較的広く落ち着きがあり、立ち飲みの場やカウンター席、テーブル席もきちんと用意されている。
「Oh, Jack!!!」
「久しぶりだな!」
「ジャック!?最近顔見せねえから死んだのかと思ったぜ!」
「何してたんだよ」
パイプ煙草を吸うラフな格好をした40代、50代くらいの男性達が店に入ってすぐジャックの周りに集まってきて、笑顔でジャックの肩や背中を叩いている。
「It's been a while. 俺は元気ですよ、先輩方」
ジャックは懐かしそうに笑って返事をした。
男性達がジャックに付いてきた私たちに気付き、
「おぉ、そいつら友達か?」
「ジャックの知り合いならサービスするぜえ~」
「半額でご馳走してやんよ」
なんて気前の良いことを言いながらテーブル席まで案内してくれた。
その途中ジャックが陽に近付き、小声で話し掛ける。
「陽くん」
「んあ?」
「シャロン君に酒でも飲ませて眠らせてやってくれないか。最近疲れてるみたいなんでね」
「…まあ…確かにそうだな。移動の手続きで働きっぱなしの時もあるし」
陽はふむと頷き、早速シャロンに近付いて「一杯どうっすか?」なんてにかーっと笑いながら肩に腕を回し、2人で同じテーブル席につく。
その隣のテーブルでバズ先生とキャシー、フォックスの3人がメニューを見始める。
私とジャックはそのまた隣のテーブル席に座った。
シャロンのいる時にシャロンから離れることはあまりないから、少し変な気分だ。今はテーブル1個分離れている。
いつもなら隣に座るのに…と思ったところで、シャロンの近くにいることが当たり前になっていることに気付きブンブンと首を振った。
いつの間にか私は、シャロンの傍にいることに慣れてしまっているらしい。
こんなザマじゃだめね。いつかは……離れるのに。
メニューを見ながら、私は何気なくジャックに聞いた。
「お店の人とお友達みたいだけど、結構来てるの?もしかして意外と酒好きなのかしら?初めて会った時もバーにいたし」
「それなりに好きだよ。酒を飲む男は嫌い?」
「飲食の趣味にまでどうこう言うつもりはないわ」
「ふーん、お酒はいいのか。そういえば煙草は嫌いだったよね。やめさせるよ」
ジャックは先程のパイプ煙草を吸っている男性達に指で×のサインを送った。
男性達はハッと気付いたように煙草をしまい始める。
年下であるジャックの言うことを聞くってことは、それだけあの人達にとってジャックの存在が大きいってことなのかしら。
別に、この距離なら匂いがうつらないからあまり気にならないんだけど…まぁ、やめてくれるに超したことはない。
「この店にいるあなたの友達っておじさんばかりね」
「まぁ、職業柄ね。あの人達はたまに俺の手伝いをしてくれるんだ。俺ほど若いのはなかなかいないんじゃないかな」
「…もしかしてあの人達も犯罪者?こんな場所に集まって金を稼いでるの?それにしてはこの街、治安良さそうだけど」
「あの人達は一応そういうのからは引退してるよ。ここは若い頃色々とやらかした連中の集まる街でもある。…まぁ、そんなこと知らずに住んでる一般市民も多いけど」
ふーん、こんな街に隠れ住む連中もいるのね。
色んな生き方があるなぁ…と思いながらふと隣のテーブルを見ると、キャシーが盛り上がっていた。
「飲みますわよ~っ!」
「ちょっとキャシー。あなた未成年でしょ?」
「あら、犯罪組織の人間が法律を気にするなんてバカらしいと思いませんこと?」
この国でも未成年の飲酒は禁止となっている。
でも、私が言いたいのはそういうことじゃない。
「未成年の飲酒は脳萎縮を早くもたらす危険性があるわよ」
「…アリスってば、お堅いんですから…」
キャシーはしぶしぶといった様子でグラスをテーブルに置いた。
こういう時は素直だ。
そして、ちらりと横の黙って座っているフォックスを見て、口を尖らせた。
「ていうかフォックスさん、無愛想すぎませんこと?もうちょっと楽しそうにしてくださってもいいんですのよ」
「別に、あんたらと必要以上に馴れ合うつもりはない」
「冷たいこと。まぁ、この組織に入ったばかりですしそうすぐ馴染めないのも当然ですわよね。…何か盛り上がる話題はありませんかしら」
うーん…と難しい顔で考え始めるキャシーと、その様子を少々鬱陶しそうに見ているフォックス。
更にその様子を見ている私は、そのうちフォックスもこういうキャシーを面白く感じてくるだろうと予感した。
無自覚だろうけど、キャシーは相手を自分のペースに巻き込むのが上手い。
しつこいくらい絡んできても許せてしまうのは、悪気ない純粋な行動のためだ。
おかしな子よねぇ。
「そういえば、アリスってあの方とはどういうご関係だったんですの?」
「へ?」
急に私に話を振ってきたので間抜けな声が出てしまった。
「目元にホクロがあって茶髪の…左の目が前髪でほとんど隠れてる男性ですわ」
「アランさんか」
私より先に、陽がポツリと言った。
「へぇ、あの方アランって名前なんですのね。………ってアラン!?“あの3人”のアランですの!?どうりでお強いはずですわ!」
…なんでキャシーがアランのことを聞いてくるんだろう。
キャシーとアランが対面したのって、私の知る限りじゃあの闇取引の場でだけのはずなんだけど…。
私たちの間に何を感じ取ったと言うのか。
「別にどういう関係でもなかったわよ。ていうか、フォックスはそんな話題興味ないでしょ。もっと別の話をしたらどうなの」
「あら、照れてますの?珍しい」
あぁもう、聞いちゃいないわね。
この中じゃ知ってるのは陽くらいだけど一応告白された身だし、ここであいつの話をされるのは…なんというかむず痒い。
近しい人間にこういうことを聞かれるのは、変な感じがするものね。
「…あいつかぁ」
シャロンがぼそっと放った一言でゾクッと寒気が走った。
シャロンは運ばれてきたお酒を飲みながら、なんとも不気味な笑顔を浮かべている。
そういえば、シャロンも一度アランを見たことがあったわね…。
怖いからその表情やめてほしい。
「…あ、あなたどういう話題が好きなの?」
キャシーは話題を変える気がないようなので、フォックスに直接聞いてみた。
フォックスはお酒をちょっとずつ飲みながら答える。
「おれは…この組織のことが気になるな」



