と。
「こ、こいつ…ッ」
敵の1人が急に青ざめた顔をして後退りする。
その視線はシャロン様を捉えている。
「俺のいた組織を潰した裏切り者の餓鬼だ!」
……え?
「金も武器も、全部持っていきやがった、破滅を呼び寄せる悪魔…ッ!邪魔する仲間を大量虐殺しても平気でいられる鬼畜野郎だ!」
男はぶるぶると震え始め、化け物でも見るかのような表情でシャロン様を見ている。
…この方、もしかしてシャロン様がクリミナルズへ来る前に所属していた組織にいた方ですの…?
「は?お前の組織潰した奴って確か今クリミナルズの………、」
他の男達の顔も青ざめていく。
シャロン様は何も言わず、ただゾッとするほど冷たい表情をしている。
「こいつらクリミナルズなのか!?」
「嫌だ!俺死にたくねえ!」
敵は武器を床に捨てて逃げようとするが、入り口兼出口には彼らが最も恐れているであろうシャロン様が立っている。出られない。
「どうせ……俺みたいな、組織の末端で働いていたような人間のことは覚えてねぇんだろ。…いや…存在を認識していたかどうかすら怪しいな」
先程うるさくしていた男が、声を震わせながらシャロン様に問い掛ける。
「確かにあの組織は酷かった。だがなあ……お前のしたことだってもっとずっと惨いことだ」
先代リーダーがクリミナルズを率いていた時代に、クリミナルズの関わった犯罪組織の1つに所属していた子供がシャロン様で、当時その組織のそれなりの地位にいたということは確かに聞いている。
シャロン様はその組織を裏切り戦力の殆どを盗み取ってクリミナルズへ亡命した、とも。
きっとこの男の言うように私には想像のつかないほど残酷なことだってしてきたのだろう。
男はバッと今度は私たちの方を向いて叫んだ。
「覚えとけ!裏切る人間はなァ、何度でも裏切るんだよ。お前らの組織だっていずれ裏切られるに決まってんだ。この男は悪魔だ、人の心なんて持ち合わせちゃいねぇ!こいつみたいな野郎に付いていくお前らの気が知れねえよ、お前らのためを思って言ってやってるんだ。今すぐ逃げろ。こいつの率いる組織が、こいつによって死体の山になる日だって近いかもしれねぇんだぞ!こいつは最低最悪の、」
―――…バズ君とアリスが男を殴ったのは、ほぼ同時だった。
バズ君は腹を、アリスは顔面を。
男は短い呻き声を上げ、床に倒れ込んだ。
「帰ろうか、リーダー」
「ジャックが打ち上げに連れてってくれるらしいわよ?」
2人は何事もなかったかのようにシャロン様の方を向く。
……よかった、2人がやってくれて。
お金を袋に入れるという役目がなければ私がやっていたところですわ。
「大人げねーな~アリスちんもバズっちも」
そう言う陽だってさっき武器を取り出そうとしていたことを、私は見逃していない。
シャロン様が何をした人間であろうと、今シャロン様が纏めている組織が好きだから、私はシャロン様に付いていく。
それはみんなも同じらしい。
「…お前ら愛してるよぉ」
私は初めてシャロン様のこんな表情を――嬉しそうな、少し困ったような苦笑を見た気がした。
―――
――――――
結局残った敵は私たちがクリミナルズだと知ったからかシャロン様が怖かったのか、どちらか定かではないがとにかく襲ってこなくなり、あっさり大金を持ち帰ることができた。
「結構あるね」
「そうですわね…車で来た方どのくらいいます?」
ジャックと私でお金の入った袋を運ぶ帰り道、他のみんなにそう聞くと、
「おれは車だ」
「ボクも車で来たよ」
「俺も車だけど、荷物入ってるからこれは置けないかな」
車で来たのはフォックスさんとバズ君、ジャックのみだった。
アリスとシャロン様はタクシー、陽はバイクで来たと言う。
「じゃあお金とキャシーはバズ先生の車に詰めて、私とシャロンはフォックスの車にお邪魔しようかしら」
ちょ、アリス、さらっと私も一緒に詰めないでくださいまし。しかもバズ君の車に!
「どういうおつもりですの…!?」
アリスに近寄り小声で聞くと、アリスも小声で返してきた。
「このまま気まずい状態が続くの嫌でしょう。ちゃんと返事した方がいいと思うわ」
「……兄妹だと言えとおっしゃいますの?」
「いや、そういうことじゃないわ。バズ君だって、兄妹だからって理由でフラれても納得できないと思うわよ。断るにせよ、妹という立場から返事されるのはショックなんじゃないかしら」
「じゃあどうしろと……」
「ちゃんと1人の女の子として返事してあげて」
………
…………………あっ。
……そう言われてみればそれが一番良い。
わざわざ兄妹であることを意識しなくても、普通に断ればいいんですわ。
…私ってば、なんという遠回りを……。
「ジャックが先頭を走って。私たちは付いていくから。絶景に連れて行ってくれるんでしょ?」
「あぁ。任せて」
ジャックはアリスにウインクし、持っていた袋をバズ君の車の後部座席に置いてから自分の車に乗り込む。
シャロン様とアリスはフォックスさんの車へ、陽はバイクに乗った。
続いてバズ先生も自分の車の運転席に乗り込み、私も後部座席にお金の入った袋を置いた後、おずおずと助手席に乗る。
ジャックの車が走り出し、その次にフォックスさんの車、陽のバイクが走り出す。
私の乗ったバズ君の車は一番後ろを走っている。
うう、気まずい…!デートというのが嘘だとバレた以上、なぜそんな嘘を吐いたのかと疑問に思われているに決まってる。
タイミングがタイミングなだけに、諦めさせようとしてそんなことを言ったということまでバレているかもしれない。
「“デート”は楽しかった?ごめんね、“デート”の邪魔しちゃって。“デート”に出かけてすぐ仲間を呼ぶ羽目になるなんて、キャシーも大変だね」
デートデートうるさいですわ!
「からかわないでくださいな…」
「デートなんて言って見栄張るからだよ。キャシーがリーダー以外の男とデートしようとするなんてそもそも絶対ないし。嘘だって最初から丸分かり」
ううっ…!
そ、そこまでお見通しだと恥ずかしいじゃありませんの。
なぜそんな嘘を吐いたか聞かれると思ってビクビクしながら身構えていたけれど、バズ君は分かっているのか気にしていないのか、それについては聞いてこない。
「呼ばれたのに遅くなってごめんね。他のメンバーの荷造り手伝ってる最中だったから、連絡見るの遅れたんだ」
日本に向けて出発する日はもう明後日に迫っている。
そういえば、今朝は慌ただしく私物を整理している人が多かった。いらない物を捨てに行く人も多かったのか、廊下の人通りだっていつもより多かった。
「いえ、来てくれただけでも有り難いですわ。本来私の任務でしたの…に…」
「こ、こいつ…ッ」
敵の1人が急に青ざめた顔をして後退りする。
その視線はシャロン様を捉えている。
「俺のいた組織を潰した裏切り者の餓鬼だ!」
……え?
「金も武器も、全部持っていきやがった、破滅を呼び寄せる悪魔…ッ!邪魔する仲間を大量虐殺しても平気でいられる鬼畜野郎だ!」
男はぶるぶると震え始め、化け物でも見るかのような表情でシャロン様を見ている。
…この方、もしかしてシャロン様がクリミナルズへ来る前に所属していた組織にいた方ですの…?
「は?お前の組織潰した奴って確か今クリミナルズの………、」
他の男達の顔も青ざめていく。
シャロン様は何も言わず、ただゾッとするほど冷たい表情をしている。
「こいつらクリミナルズなのか!?」
「嫌だ!俺死にたくねえ!」
敵は武器を床に捨てて逃げようとするが、入り口兼出口には彼らが最も恐れているであろうシャロン様が立っている。出られない。
「どうせ……俺みたいな、組織の末端で働いていたような人間のことは覚えてねぇんだろ。…いや…存在を認識していたかどうかすら怪しいな」
先程うるさくしていた男が、声を震わせながらシャロン様に問い掛ける。
「確かにあの組織は酷かった。だがなあ……お前のしたことだってもっとずっと惨いことだ」
先代リーダーがクリミナルズを率いていた時代に、クリミナルズの関わった犯罪組織の1つに所属していた子供がシャロン様で、当時その組織のそれなりの地位にいたということは確かに聞いている。
シャロン様はその組織を裏切り戦力の殆どを盗み取ってクリミナルズへ亡命した、とも。
きっとこの男の言うように私には想像のつかないほど残酷なことだってしてきたのだろう。
男はバッと今度は私たちの方を向いて叫んだ。
「覚えとけ!裏切る人間はなァ、何度でも裏切るんだよ。お前らの組織だっていずれ裏切られるに決まってんだ。この男は悪魔だ、人の心なんて持ち合わせちゃいねぇ!こいつみたいな野郎に付いていくお前らの気が知れねえよ、お前らのためを思って言ってやってるんだ。今すぐ逃げろ。こいつの率いる組織が、こいつによって死体の山になる日だって近いかもしれねぇんだぞ!こいつは最低最悪の、」
―――…バズ君とアリスが男を殴ったのは、ほぼ同時だった。
バズ君は腹を、アリスは顔面を。
男は短い呻き声を上げ、床に倒れ込んだ。
「帰ろうか、リーダー」
「ジャックが打ち上げに連れてってくれるらしいわよ?」
2人は何事もなかったかのようにシャロン様の方を向く。
……よかった、2人がやってくれて。
お金を袋に入れるという役目がなければ私がやっていたところですわ。
「大人げねーな~アリスちんもバズっちも」
そう言う陽だってさっき武器を取り出そうとしていたことを、私は見逃していない。
シャロン様が何をした人間であろうと、今シャロン様が纏めている組織が好きだから、私はシャロン様に付いていく。
それはみんなも同じらしい。
「…お前ら愛してるよぉ」
私は初めてシャロン様のこんな表情を――嬉しそうな、少し困ったような苦笑を見た気がした。
―――
――――――
結局残った敵は私たちがクリミナルズだと知ったからかシャロン様が怖かったのか、どちらか定かではないがとにかく襲ってこなくなり、あっさり大金を持ち帰ることができた。
「結構あるね」
「そうですわね…車で来た方どのくらいいます?」
ジャックと私でお金の入った袋を運ぶ帰り道、他のみんなにそう聞くと、
「おれは車だ」
「ボクも車で来たよ」
「俺も車だけど、荷物入ってるからこれは置けないかな」
車で来たのはフォックスさんとバズ君、ジャックのみだった。
アリスとシャロン様はタクシー、陽はバイクで来たと言う。
「じゃあお金とキャシーはバズ先生の車に詰めて、私とシャロンはフォックスの車にお邪魔しようかしら」
ちょ、アリス、さらっと私も一緒に詰めないでくださいまし。しかもバズ君の車に!
「どういうおつもりですの…!?」
アリスに近寄り小声で聞くと、アリスも小声で返してきた。
「このまま気まずい状態が続くの嫌でしょう。ちゃんと返事した方がいいと思うわ」
「……兄妹だと言えとおっしゃいますの?」
「いや、そういうことじゃないわ。バズ君だって、兄妹だからって理由でフラれても納得できないと思うわよ。断るにせよ、妹という立場から返事されるのはショックなんじゃないかしら」
「じゃあどうしろと……」
「ちゃんと1人の女の子として返事してあげて」
………
…………………あっ。
……そう言われてみればそれが一番良い。
わざわざ兄妹であることを意識しなくても、普通に断ればいいんですわ。
…私ってば、なんという遠回りを……。
「ジャックが先頭を走って。私たちは付いていくから。絶景に連れて行ってくれるんでしょ?」
「あぁ。任せて」
ジャックはアリスにウインクし、持っていた袋をバズ君の車の後部座席に置いてから自分の車に乗り込む。
シャロン様とアリスはフォックスさんの車へ、陽はバイクに乗った。
続いてバズ先生も自分の車の運転席に乗り込み、私も後部座席にお金の入った袋を置いた後、おずおずと助手席に乗る。
ジャックの車が走り出し、その次にフォックスさんの車、陽のバイクが走り出す。
私の乗ったバズ君の車は一番後ろを走っている。
うう、気まずい…!デートというのが嘘だとバレた以上、なぜそんな嘘を吐いたのかと疑問に思われているに決まってる。
タイミングがタイミングなだけに、諦めさせようとしてそんなことを言ったということまでバレているかもしれない。
「“デート”は楽しかった?ごめんね、“デート”の邪魔しちゃって。“デート”に出かけてすぐ仲間を呼ぶ羽目になるなんて、キャシーも大変だね」
デートデートうるさいですわ!
「からかわないでくださいな…」
「デートなんて言って見栄張るからだよ。キャシーがリーダー以外の男とデートしようとするなんてそもそも絶対ないし。嘘だって最初から丸分かり」
ううっ…!
そ、そこまでお見通しだと恥ずかしいじゃありませんの。
なぜそんな嘘を吐いたか聞かれると思ってビクビクしながら身構えていたけれど、バズ君は分かっているのか気にしていないのか、それについては聞いてこない。
「呼ばれたのに遅くなってごめんね。他のメンバーの荷造り手伝ってる最中だったから、連絡見るの遅れたんだ」
日本に向けて出発する日はもう明後日に迫っている。
そういえば、今朝は慌ただしく私物を整理している人が多かった。いらない物を捨てに行く人も多かったのか、廊下の人通りだっていつもより多かった。
「いえ、来てくれただけでも有り難いですわ。本来私の任務でしたの…に…」



