他国に行けばいい加減外出許可も出るだろうし、早めに行きたいところね。
「行き先は?」
「日本だよぉ」
へぇ。それなら研究のことについて調べるにおいても都合が良い。
「いつ出るの?」
「一週間以内には。早めの方がいいしねぇ」
…随分急ね。私が知らなかったということは、おそらく他の構成員ほとんどにも知らされていないだろう。それぞれの準備期間ってもんがあるでしょうに、遠慮会釈もない。
「それは俺も同行していいのかな?」
唐突にドアが開いたので、見ればダッフルコートを着たジャックが立っていた。せめてノックしてから入ってきなさいよ…。
ミルクレープで有名な店の箱を持っているから、まぁよしとしましょう。で、それ勿論私にくれるのよね?
「盗み聞きとは悪趣味ね。ヤモみたい」
「人聞き悪いな。入ろうとしたらたまたま会話が聞こえたんだよ」
ジャックは予想通り私とシャロンの使っている机の上にミルクレープの入っているであろう箱を置き、棚にあるお皿とフォークを取りに行く。
あ、そういえば。
「ヤモはどうするの?冬眠してるみたいだけど」
「ヤモならほっといてもあったかくなったら来るんじゃなあい?」
起きた時私たちがいなくなってたら怒りそうな気もするけど…。
まぁ、ほっといても来るというのは別に有り得ない話じゃない。なんだかんだでヤモはどこでもやってこれる。
お皿とフォークを私たちの前に置くジャックに、シャロンが問う。
「んでぇ、同行って?俺らと一緒に日本に来るつもりなの?」
「よければ、ね。君たちが日本へ行くなら是非付いて行きたいと思うんだけど」
そういえばジャックはこの組織のメンバーじゃない。…あまりにも自然に出入りするから、私まであまりそういうことを意識しなくなってしまっているけれど。
共に日本へ来るつもりならシャロンに許可を求めるのは当然だ。
「それと、夜のお出かけにも付いていきたいな」
「はぁ?」
シャロンが本気で嫌そうに顔を顰める。
「百歩譲って日本へ来るのは良いとしてぇ、なぁんでお前を俺とアリスのお出かけにまで連れてかなきゃならないの?」
そんな嫌がらなくても…。
「男2人に付き添ってもらうとか、アリスちんモテモテ~」
「金づるが2人もいて喜ばしいわ」
陽がからかってくるので冗談めかしてそう答えると、シャロンに睨まれた。こわ。
「ジャックも一緒に来ていいなんて一言も言ってないんだけどぉ」
「だって、シャロン君、近頃全然アリスと遊ばせてくれないじゃないか。こういう時くらい一緒に出掛けさせてほしいな」
「遊ぶ必要なんかないでしょお?こうして話せてるんだから」
「シャロン君の前でしか話せないと監視されてるみたいで落ち着かないんだよ。まぁ、出入りさせてもらってる身だしその点に関しては文句言えないけど。監視されるのはいいとして、その分せめて一緒に買い物くらい…ね」
「…控えめに図々しいなぁ…」
はぁ、とシャロンが眉を潜めて困ったように溜め息を吐いた。
ジャックの相手はやっぱり少し苦手みたいだ。
「……じゃあ、30分だけ2人であのカフェ行ってきなよぉ。その代わり夜は付いてこないで」
あのシャロンが妥協した…。余程付いてきてほしくないのね。
さほど付き合いの長くないジャックをプライベートの買い物に連れていくのは嫌なんだろう。
「それなら分かったよ。ありがとう、シャロン君」
あっさりその妥協案を受け入れたジャック。元より私と2人で話すことが目的か…。
「30分経っても戻ってこなかったら怒るからねぇ?」
シャロンはそう釘を刺し、ミルクレープを食べ始めた。
私もこれを食べ終わってから行こうと思い、フォークを持とうとした…が、その手を捕まえられる。
「アリス、あーん」
にこにこと可愛らしい笑顔で自分の持つフォークを私の口元に持ってくるシャロン。
もう、子供じゃないってのに…。文句を言えば面倒なことになりそうだから、大人しくそれを口に含む。甘すぎず素朴な味だ。口あたりもよくておいしい。
シャロンは満足げににんまりと笑い、私の口元についたミルクレープの一部を指ですくって食べた。
「……親子みたいな関係って言っても、こうイチャイチャされるとなんだか居づらいね」
「まぁ、いつものことっしょ。慣れるが勝ち」
ジャックと陽が隣でこそこそ話していたが、内容はよく聞こえなかった。
―――
―――――
「新しい情報が得られたよ。君にとっては意外かもしれない」
カフェの個室に入るなり、ジャックは私に伝えた。
ミルクレープを食べ終わり、カフェに行ってこようという時になると、シャロンはわざわざ携帯でタイマーをセットしたのだ。
きっちり30分以内に戻らないと怒りそうだということはジャックも察しているのか、単刀直入に言ってくる。
「如月は元幹部らしい。この組織の」
「……え」
単純に、驚いた。
如月がクリミナルズの一員だったということに、というのもあるが、何より…シャロンはそれを知っているだろうか、と。
何年前の話だろう。少なくとも、私は組織で如月のような女性に会った覚えはない。
陽に会っていたことも忘れていたくらいだから、私の記憶なんて信用できないけど…。
シャロンがこの組織に入る前って可能性もあるわよね…でも、そんな前だったら如月何歳なのよって話に…。
「夏頃、シャロン君に気を付けた方がいいって言ったの覚えてる?」
私の思考を遮るように、ジャックが問うてきた。
「あぁ……言ってたわね。裏で探ってる、とかなんとか」
だからといってなぜ気を付けなければいけないのか、未だによく分からないけれど。
探ってくれているなら、いいことなんじゃないの?
「最初の頃シャロン君が俺と関わりを持ち続けようとしたのは、マーメイドプランの情報を俺から引き出そうとしてたからだ。俺と協力したかったみたいだね。俺が君との協力関係を強化し始めてからは、一転して俺を警戒してるみたいだけど」
シャロンに協力することと、私に協力することが、まるで違うことのように言う。
シャロンを悪く言うのなら怒る。でも、ジャックは今シャロンを悪人だと言おうとしているわけではないのだと、それはなんとなく分かる。
「シャロン君にも隠し事があるであろうことを分かっておいてほしい」
ジャックはただそれだけを言って、話を変えた。
「俺も日本へ行く準備をするから、暫くは会えないね」
「…ほんとに来るつもりなのね」
「もちろん。君のためならどこでも行くさ」
ジャックからナチュラルに出てくる甘い言葉にも大分慣れてきたような気がする。
「あぁそう…」と素っ気なく返していると、可愛らしい少女が私の頼んだオレンジジュースを運んできた。もちろんこれはジャックの奢りだ。
「行き先は?」
「日本だよぉ」
へぇ。それなら研究のことについて調べるにおいても都合が良い。
「いつ出るの?」
「一週間以内には。早めの方がいいしねぇ」
…随分急ね。私が知らなかったということは、おそらく他の構成員ほとんどにも知らされていないだろう。それぞれの準備期間ってもんがあるでしょうに、遠慮会釈もない。
「それは俺も同行していいのかな?」
唐突にドアが開いたので、見ればダッフルコートを着たジャックが立っていた。せめてノックしてから入ってきなさいよ…。
ミルクレープで有名な店の箱を持っているから、まぁよしとしましょう。で、それ勿論私にくれるのよね?
「盗み聞きとは悪趣味ね。ヤモみたい」
「人聞き悪いな。入ろうとしたらたまたま会話が聞こえたんだよ」
ジャックは予想通り私とシャロンの使っている机の上にミルクレープの入っているであろう箱を置き、棚にあるお皿とフォークを取りに行く。
あ、そういえば。
「ヤモはどうするの?冬眠してるみたいだけど」
「ヤモならほっといてもあったかくなったら来るんじゃなあい?」
起きた時私たちがいなくなってたら怒りそうな気もするけど…。
まぁ、ほっといても来るというのは別に有り得ない話じゃない。なんだかんだでヤモはどこでもやってこれる。
お皿とフォークを私たちの前に置くジャックに、シャロンが問う。
「んでぇ、同行って?俺らと一緒に日本に来るつもりなの?」
「よければ、ね。君たちが日本へ行くなら是非付いて行きたいと思うんだけど」
そういえばジャックはこの組織のメンバーじゃない。…あまりにも自然に出入りするから、私まであまりそういうことを意識しなくなってしまっているけれど。
共に日本へ来るつもりならシャロンに許可を求めるのは当然だ。
「それと、夜のお出かけにも付いていきたいな」
「はぁ?」
シャロンが本気で嫌そうに顔を顰める。
「百歩譲って日本へ来るのは良いとしてぇ、なぁんでお前を俺とアリスのお出かけにまで連れてかなきゃならないの?」
そんな嫌がらなくても…。
「男2人に付き添ってもらうとか、アリスちんモテモテ~」
「金づるが2人もいて喜ばしいわ」
陽がからかってくるので冗談めかしてそう答えると、シャロンに睨まれた。こわ。
「ジャックも一緒に来ていいなんて一言も言ってないんだけどぉ」
「だって、シャロン君、近頃全然アリスと遊ばせてくれないじゃないか。こういう時くらい一緒に出掛けさせてほしいな」
「遊ぶ必要なんかないでしょお?こうして話せてるんだから」
「シャロン君の前でしか話せないと監視されてるみたいで落ち着かないんだよ。まぁ、出入りさせてもらってる身だしその点に関しては文句言えないけど。監視されるのはいいとして、その分せめて一緒に買い物くらい…ね」
「…控えめに図々しいなぁ…」
はぁ、とシャロンが眉を潜めて困ったように溜め息を吐いた。
ジャックの相手はやっぱり少し苦手みたいだ。
「……じゃあ、30分だけ2人であのカフェ行ってきなよぉ。その代わり夜は付いてこないで」
あのシャロンが妥協した…。余程付いてきてほしくないのね。
さほど付き合いの長くないジャックをプライベートの買い物に連れていくのは嫌なんだろう。
「それなら分かったよ。ありがとう、シャロン君」
あっさりその妥協案を受け入れたジャック。元より私と2人で話すことが目的か…。
「30分経っても戻ってこなかったら怒るからねぇ?」
シャロンはそう釘を刺し、ミルクレープを食べ始めた。
私もこれを食べ終わってから行こうと思い、フォークを持とうとした…が、その手を捕まえられる。
「アリス、あーん」
にこにこと可愛らしい笑顔で自分の持つフォークを私の口元に持ってくるシャロン。
もう、子供じゃないってのに…。文句を言えば面倒なことになりそうだから、大人しくそれを口に含む。甘すぎず素朴な味だ。口あたりもよくておいしい。
シャロンは満足げににんまりと笑い、私の口元についたミルクレープの一部を指ですくって食べた。
「……親子みたいな関係って言っても、こうイチャイチャされるとなんだか居づらいね」
「まぁ、いつものことっしょ。慣れるが勝ち」
ジャックと陽が隣でこそこそ話していたが、内容はよく聞こえなかった。
―――
―――――
「新しい情報が得られたよ。君にとっては意外かもしれない」
カフェの個室に入るなり、ジャックは私に伝えた。
ミルクレープを食べ終わり、カフェに行ってこようという時になると、シャロンはわざわざ携帯でタイマーをセットしたのだ。
きっちり30分以内に戻らないと怒りそうだということはジャックも察しているのか、単刀直入に言ってくる。
「如月は元幹部らしい。この組織の」
「……え」
単純に、驚いた。
如月がクリミナルズの一員だったということに、というのもあるが、何より…シャロンはそれを知っているだろうか、と。
何年前の話だろう。少なくとも、私は組織で如月のような女性に会った覚えはない。
陽に会っていたことも忘れていたくらいだから、私の記憶なんて信用できないけど…。
シャロンがこの組織に入る前って可能性もあるわよね…でも、そんな前だったら如月何歳なのよって話に…。
「夏頃、シャロン君に気を付けた方がいいって言ったの覚えてる?」
私の思考を遮るように、ジャックが問うてきた。
「あぁ……言ってたわね。裏で探ってる、とかなんとか」
だからといってなぜ気を付けなければいけないのか、未だによく分からないけれど。
探ってくれているなら、いいことなんじゃないの?
「最初の頃シャロン君が俺と関わりを持ち続けようとしたのは、マーメイドプランの情報を俺から引き出そうとしてたからだ。俺と協力したかったみたいだね。俺が君との協力関係を強化し始めてからは、一転して俺を警戒してるみたいだけど」
シャロンに協力することと、私に協力することが、まるで違うことのように言う。
シャロンを悪く言うのなら怒る。でも、ジャックは今シャロンを悪人だと言おうとしているわけではないのだと、それはなんとなく分かる。
「シャロン君にも隠し事があるであろうことを分かっておいてほしい」
ジャックはただそれだけを言って、話を変えた。
「俺も日本へ行く準備をするから、暫くは会えないね」
「…ほんとに来るつもりなのね」
「もちろん。君のためならどこでも行くさ」
ジャックからナチュラルに出てくる甘い言葉にも大分慣れてきたような気がする。
「あぁそう…」と素っ気なく返していると、可愛らしい少女が私の頼んだオレンジジュースを運んできた。もちろんこれはジャックの奢りだ。



