マイナスの矛盾定義

「ん、あぁ…あれは安全性を第一に考えたうえでまず1つのエレベーターで移動するという構造をどうにかしようと思ってな。一応の使用時間は決まっていたとはいえ明確なルールは無いようなものだったし、移動したい時に移動できないのは不便だろ?移動手段を増やし、その分警備も増やして…」



やっぱり仕事の話となるとよく喋る。


…エリックからの好意に気付いていないわけじゃない。でも、いざ言われるとなると緊張してしまう。私なんかでいいのだろうかと。



「そろそろお部屋に戻りましょうか」



エリックがちらちらと時計を気にしていることは分かっている。


やることがあるのだろう。私から言ってあげないと無理するかもしれない。



「あぁ…。悪いな、折角誘ってくれたのに少ししかいられなくて」


「いいんです。少し浜辺を歩いてみたかっただけですから」



エリックが何か言いたげな顔をしたけれど、気付かないふりをして旅館の方へ歩き出した。







暖かい旅館に戻った私達は、着ていたコートを脱いで部屋へ向かう。



部屋に入るや否や、エリックは冷蔵庫を開けてスティックのアイスクリームを2つ渡してきた。



「私は仕事でなかなか行けないが、ふさぎ込んでるあいつにも渡してやってくれ」



……お兄ちゃんか。


なるほど、このアイスならそんなに甘くないからお兄ちゃんでも大丈夫だろう。考えて選んでくれたんだ。……でも。



「この時期にアイスって、季節外れじゃないですか?」


「アイスはどの時期もうまい」



にやりと笑って仕事へ戻るエリックは、少し可愛かった。