ぽかんと口を開けて私の話を聞いていた日向さんは、すぐに相合を崩して「そっか」と優しげな口調で言った。
「良かった。お悩み相談、成功だね」
「はい。あの、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げると、彼は「お礼なんていいよ」と笑っていた。
良かった……たぶん、真意は伝わっていない。
波と、風の音に隠した本当の気持ちは、大人の彼に伝えるには早すぎるから。
波打ち際を歩く自分たちの足並みが、いつのまにか綺麗に揃っている。
二人三脚。
初めて挑戦した仕事が、彼と一緒で本当に良かったと思う。
「あのさ、美由ちゃん」
波が、また一際大きな音を立てて勢いよく私たちの足を覆い尽くした。夕陽が水平線の向こうに沈んでいく。まだ暗闇に溶けていない彼の顔を、私はしっかりと見つめていた。
「僕も、好きなのかもしれない」
くっきりと輪郭を帯びた言葉が、私の耳に甘く響く。
……誤魔化せなかった。
高校生の私の隠し事なんて、大人の彼にはバレバレで。
だけど、やっぱりバレてもいいやと思えてしまう。
「……はい。私も、好きです」
恥ずかしくて、彼の顔を直視することができずに俯いて答えた。彼の左手が私の右手から離れて、今度は身体ごと包み込む。
潮の香りと、愛しい人の香りが溶けて、いつのまにか彼の顔は薄闇の中に混ざり合っていて。
赤くなった顔を見られなくて良かったと、ほっとしている自分がいた。
彼の肩越しに見える二人三脚の足跡が、続けてやって来た波に押し流されていく。
でも、不安はない。
また新しい一歩は、きみと二人で踏み出せるから。
【終わり】
「良かった。お悩み相談、成功だね」
「はい。あの、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げると、彼は「お礼なんていいよ」と笑っていた。
良かった……たぶん、真意は伝わっていない。
波と、風の音に隠した本当の気持ちは、大人の彼に伝えるには早すぎるから。
波打ち際を歩く自分たちの足並みが、いつのまにか綺麗に揃っている。
二人三脚。
初めて挑戦した仕事が、彼と一緒で本当に良かったと思う。
「あのさ、美由ちゃん」
波が、また一際大きな音を立てて勢いよく私たちの足を覆い尽くした。夕陽が水平線の向こうに沈んでいく。まだ暗闇に溶けていない彼の顔を、私はしっかりと見つめていた。
「僕も、好きなのかもしれない」
くっきりと輪郭を帯びた言葉が、私の耳に甘く響く。
……誤魔化せなかった。
高校生の私の隠し事なんて、大人の彼にはバレバレで。
だけど、やっぱりバレてもいいやと思えてしまう。
「……はい。私も、好きです」
恥ずかしくて、彼の顔を直視することができずに俯いて答えた。彼の左手が私の右手から離れて、今度は身体ごと包み込む。
潮の香りと、愛しい人の香りが溶けて、いつのまにか彼の顔は薄闇の中に混ざり合っていて。
赤くなった顔を見られなくて良かったと、ほっとしている自分がいた。
彼の肩越しに見える二人三脚の足跡が、続けてやって来た波に押し流されていく。
でも、不安はない。
また新しい一歩は、きみと二人で踏み出せるから。
【終わり】



