二人三脚〜君と初仕事

 漫画の制作は驚くほどあっという間に進んでいった。
 五十部という小ロットなので、そもそも印刷自体、すぐに済んだ。
 表紙の印刷も終わり、中綴じ製本をして本が出来上がる。細かい工程は他にもあるが、やってみたら案外あっけなくて、拍子抜けしたぐらいだ。

「もう終わったんだ。あっという間だったね」

「はい。私も、びっくりしてます」

 一日で出来上がった五十部の漫画本が、ダンボールの中で積まれている。
 日向さんが出来立ての本を一冊手に取ると、真新しい紙と、インクの香りが漂った。大事そうに本を手にする日向さんのまなざしが、まるで我が子を初めて抱いたかのように柔らかく、細くなった。

「ありがとう、美由ちゃん。完璧だよ、これ。肌触りも見栄えもいい。僕が想像してた完成品そのものだ」

 満足げな日向さんの言葉に、私は胸をほっと撫で下ろす。少しでも納得のいかない箇所があったら申し訳ないと思っていたから。

「それは良かったです。私が作ったんじゃないんですけどね」

「いや、美由ちゃんが作ったんだよ。僕と、美由ちゃんの二人三脚でできた本だ。きっと即売会でたくさん売れる」

 淡く微笑みながら言う日向さんが、私にはまぶしくて。
 二人三脚という言葉に秘められた甘やかな響きが、胸をいっぱいに満たしていく。焦がしていく。
 ああ、好きだな。
 彼の描いた漫画の表紙で瞳を輝かせるヒロインの女の子が、今の自分の気持ちを代弁してくれているようだった。