二人三脚〜君と初仕事

「この漫画を本にするんだ。すごく楽しみになってきました」

 作品を読み終えた後、胸にほのかな光が灯ったような気がする。彼の作品には、人の心を動かす確かな力があった。私の仕事が、彼の作品を世に放つ一助になるのなら——製本の仕事を前にして、ワクワクしている自分がいた。
 私の言葉を聞いて、日向さんが嬉しそうに微笑む。よく見ると耳が赤くなっていて、作品を褒められて照れているのが分かった。可愛い。こんな一面もあるんだ、と、新たな発見があって素直に嬉しかった。

「確認ですが、制作数は五十部、サイズはB六判、全ページフルカラー、紙の種類はマットコート紙、で間違いないですか?」

「うん、間違いない。それでよろしく」

 漫画といえば白黒印刷が主流だが、日向さんはフルカラーでの印刷を希望した。値は張るが、その分作品の魅力の伝わり方が段違いだから、私も彼の意見に賛成した。

「それじゃあ、早速本文の印刷からしましょう」

 私は従業員に、日向さんの漫画のデータを渡した。日向さんと一緒に仕事をするのは私だけれど、実際に作業をするのはスッタフのみなさんだ。私は、ディレクターとして進行役を務めることしかできない。これで仕事をしたことになっているのかな——そんな不安に駆られた。