それだけ言うと、母はお店の方へと戻っていった。
残された私と日向さんは、互いに顔を見合わせる。私はずっとドギマギしているのに比べて、日向さんはどこか楽しそうだ。
「無理言ってごめんね。本はもともと作りたいと思ってたんだけど、昨日の美由さんの話を聞いて、どうしても一緒に仕事をしてみたいって思って」
いつの間にか砕けた口調になっている日向さんの言葉が、どうしてか胸に深く浸透する。ずっと、家業から逃げたいと思っていて、そのことを日向さんに相談したというのに。どういうわけか、今の自分は仕事に対して前向きになっていた。
「いえ、大丈夫です。突然のことで動揺しましたけど、今は、頑張ってみたいと思ってます」
「そう。それなら良かった。よろしくね、美由ちゃん」
初めて「美由ちゃん」と呼ばれて、心臓がきゅっと鳴る。
おかしい……。昨日会ったばかりの人に、こんなふうに動揺させられているなんて。泉ちゃんが嬉々とした表情でクラスの誰それが誰を好きだとかいう話を永遠としている姿が思い浮かぶ。彼女に話したら、一日中ネタにされてしまいそう。
このことは、私と彼だけの秘密だ。
残された私と日向さんは、互いに顔を見合わせる。私はずっとドギマギしているのに比べて、日向さんはどこか楽しそうだ。
「無理言ってごめんね。本はもともと作りたいと思ってたんだけど、昨日の美由さんの話を聞いて、どうしても一緒に仕事をしてみたいって思って」
いつの間にか砕けた口調になっている日向さんの言葉が、どうしてか胸に深く浸透する。ずっと、家業から逃げたいと思っていて、そのことを日向さんに相談したというのに。どういうわけか、今の自分は仕事に対して前向きになっていた。
「いえ、大丈夫です。突然のことで動揺しましたけど、今は、頑張ってみたいと思ってます」
「そう。それなら良かった。よろしくね、美由ちゃん」
初めて「美由ちゃん」と呼ばれて、心臓がきゅっと鳴る。
おかしい……。昨日会ったばかりの人に、こんなふうに動揺させられているなんて。泉ちゃんが嬉々とした表情でクラスの誰それが誰を好きだとかいう話を永遠としている姿が思い浮かぶ。彼女に話したら、一日中ネタにされてしまいそう。
このことは、私と彼だけの秘密だ。



