「ただいま」
平静を装って玄関扉を開く。中から「おかえりー」というお母さんの声がした。普段は玄関まで出迎えてくれるようなことはないのだけれど、今日は偶然、顔を出してくれた。
「あら、お友達?」
お母さんはぱっと日向さんのことを見て訊く。友達だと思われていることに驚く私。今まで男の子の友達なんて、一度も連れてきたことないのに。
「こんにちは。日向琉人と申します。やなせ印刷さんに頼みたいことがあってお邪魔しました」
「あ、お客さんだったの。ごめんなさいね。どこかで見たことのある顔ね」
日向さんの顔をじっと見つめていたお母さんが、「もしかして」と両手でパチンと音を鳴らした。
「あなた、『ひまわり』のところの……」
「はい。父が漫画家で、お世話になっています」
日向さんの言葉に合点がいったのか、お母さんはほっと胸を撫でる。
「ああ、やっぱり。今日もお父さんのご依頼かしら?」
「いえ、今日は僕自身の依頼で」
「そう。よかったら上がってちょうだい。美由、お茶をお出しして」
「はーい」
普通ならお店の受付の方からお客さんを通すのだが、私の知り合いだと分かったからか、お母さんは私にお茶出しを指図した。玄関で靴を脱いだ日向さんに、「どうぞ」と居間の方を案内する。来客用の和室に温かいお茶を淹れて、棚にあったお饅頭を彼に差し出した。この一連の流れも、私が会社の後を継ぐからと教え込まれたものだった。お姉ちゃんたちは、お茶を出すことすら、きっとできない。
平静を装って玄関扉を開く。中から「おかえりー」というお母さんの声がした。普段は玄関まで出迎えてくれるようなことはないのだけれど、今日は偶然、顔を出してくれた。
「あら、お友達?」
お母さんはぱっと日向さんのことを見て訊く。友達だと思われていることに驚く私。今まで男の子の友達なんて、一度も連れてきたことないのに。
「こんにちは。日向琉人と申します。やなせ印刷さんに頼みたいことがあってお邪魔しました」
「あ、お客さんだったの。ごめんなさいね。どこかで見たことのある顔ね」
日向さんの顔をじっと見つめていたお母さんが、「もしかして」と両手でパチンと音を鳴らした。
「あなた、『ひまわり』のところの……」
「はい。父が漫画家で、お世話になっています」
日向さんの言葉に合点がいったのか、お母さんはほっと胸を撫でる。
「ああ、やっぱり。今日もお父さんのご依頼かしら?」
「いえ、今日は僕自身の依頼で」
「そう。よかったら上がってちょうだい。美由、お茶をお出しして」
「はーい」
普通ならお店の受付の方からお客さんを通すのだが、私の知り合いだと分かったからか、お母さんは私にお茶出しを指図した。玄関で靴を脱いだ日向さんに、「どうぞ」と居間の方を案内する。来客用の和室に温かいお茶を淹れて、棚にあったお饅頭を彼に差し出した。この一連の流れも、私が会社の後を継ぐからと教え込まれたものだった。お姉ちゃんたちは、お茶を出すことすら、きっとできない。



