二人三脚〜君と初仕事

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 日向さんと共に、自宅の玄関に立ったのは翌日の学校終わりのことだ。
 昼間、教室では泉ちゃんから「昨日あのあとどうだった?」と早速聞かれた。興味津々、といったまなざしに私は思わず視線を逸らす。その仕草が、余計に彼女の関心を買ってしまったらしい。「ねえ、なにかあったんでしょ」と迫られて、今日の放課後の約束のことを白状せずにはいられなかった。

「うっそー! なになに、何が起きるの? もしかしてデート!? 初対面なのに美由ってば、隅に置けないじゃん」

「そんなんじゃないよ。うちに用があるんだって。仕事の話だよ」

「そうなの? でも、わざわざ一緒に行くっていうのは絶対そういうことだよ」

“そういうこと”のところで、泉ちゃんはひっひと怪しい笑顔を浮かべる。普段、授業中はずっと眠たそうにしているのに、色恋沙汰の話になると水を得た魚のように泳ぎ出す彼女が、私にはまぶしかった。

 放課後、『ひまわり』の前で落ち合った日向さんは、えんじ色の落ち着いたシャツに、黒いパンツを履いていて、同級生の男の子たちとは違う大人びたオーラが漂っていた。年齢を聞くと、二十歳で大学生なんだそう。どうりで大人だと思った。三つも年上の彼と放課後に待ち合わせをしている——その事実に、なんだか背徳感のようなものが湧き上がってきた。
 いや、違う違う。これは仕事。うちに依頼があるから一緒に来ただけだって。
 そう自分に言い聞かせてもなお、胸がドキドキと鳴っていた。