魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 たとえ時が経ち、いつかこの建物が朽ちてしまったとしても、私の心の中から……そして、ここに携わってくれた誰かの記憶にそれは存在し、なにかの形で受け継がれてゆく。

 新しい私の始まりの場所。ここにいる人たちと同じ、大切な存在。

「……ありがとう。またね」

 だから私は、家族のように、手を振って感謝を告げた。
 そして後ろを向くと、皆と一緒に道を下り、この場所から見える街の景色に溶け込んでゆく……。そんな私の背に風が吹きつけ、小さな呼び鈴の音と共に――。

 ――行ってらっしゃい……。

 誰かの、そんな声が届いた気がした――。


(おしまい)