「はい……」
夫の声に含まれた微かな哀切の響きには、私も同意したい気分だった。
なにも持っていなかった頃にはあんなにも変わってゆくことを望んでいたのに、大切なものが増えたとたん、時が止まって欲しいとそう願うようになった。すべてのものに終わりがあって、そこには悲しみが付きまとうから。
私は彼とそっと手を繋ぐ。
「でも……終わりという区切りがあるからこそ、私たちは選ぶことができるのかも知れません。自分にとっての答え――人生の目的地を」
「そうかもな。すべてが失われずに済むのなら、世の中は輝きで溢れすぎて、大事なものを見失わせてしまうだろう。終わりがあるこの世界に一度でも生まれ、お前たちに巡り会えたことに感謝しないといけないな」
この世この時に生まれ、この人たちに出会い、こうしていられること――それは私にとって本当に奇跡だ。きっと世の中には誰かの数だけそんなありふれた幸運が用意されている。いつもは日々の忙しなさに埋もれてそうと気付けなくても、今だけはそれがはっきりとわかる。
夫の声に含まれた微かな哀切の響きには、私も同意したい気分だった。
なにも持っていなかった頃にはあんなにも変わってゆくことを望んでいたのに、大切なものが増えたとたん、時が止まって欲しいとそう願うようになった。すべてのものに終わりがあって、そこには悲しみが付きまとうから。
私は彼とそっと手を繋ぐ。
「でも……終わりという区切りがあるからこそ、私たちは選ぶことができるのかも知れません。自分にとっての答え――人生の目的地を」
「そうかもな。すべてが失われずに済むのなら、世の中は輝きで溢れすぎて、大事なものを見失わせてしまうだろう。終わりがあるこの世界に一度でも生まれ、お前たちに巡り会えたことに感謝しないといけないな」
この世この時に生まれ、この人たちに出会い、こうしていられること――それは私にとって本当に奇跡だ。きっと世の中には誰かの数だけそんなありふれた幸運が用意されている。いつもは日々の忙しなさに埋もれてそうと気付けなくても、今だけはそれがはっきりとわかる。



