魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「ザド様!? 生きていらしたのですか……!」
「てめぇも俺がもう戻って来ねぇと思ってたのか? チッ、まぁいい。中に入れろ」
「は、はい……!」

 女が中に招き入れると、ザドはソファで横柄に足を組みながら、女に指図する。

「今すぐなにか腹に入れるものを用意しろ。それと酒もだ、早くしろ!」
「た、ただいま!」
「ったく、やってられねぇぜ」

 別人のようなザドの姿を訝しみつつ、女は奥へ引っ込んでいく。
 疲れた体にあの店で受けた傷の痛みが響き、舌打ちする彼の頭に浮かんだのは、あのサンジュに憐れまれた時のことだ。

『あなたは…………ずっと、寂しかったんじゃないの?』
「ふざけるな!」

 目の前のテーブルを強く蹴り、ザドは砕けんばかりに歯軋りする。