魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 そんな軽口で一緒に苦笑すると、私たちは止まらない涙を拭い、静かな森をゆっくりと眺めた。
 もうすぐ、私たちは家族になれる。

 いつしか差し込んできた夕陽が木漏れ日のカーテンをそこかしこに映し出し、まるでこの土地そのものが、そのことを祝ってくれているかのように感じる。

 ――ありがとう、ここに導いてくれて。

 絶え間ない感謝の気持ちを抱きながら、私は後ろを向いて、もう一度ディクリド様と口づけをする。そうすると、音も景色もないもかもが遠ざかり……いつしか私は彼と一緒に、この大地の一部となれたような気がした。