魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「これを。戦に行く前から贈ると決めていた。俺が死んだときのことを思うと渡せなかったが……」
「これは……?」

 彼の言うがまま、私はその小箱を空けてみせる。すると……。
 中にあったのは美しい金の指輪だ。木漏れ日を吸い込み、中央に据えられたトパーズがまるで光源であるかのように眩く煌めいている。

「だ、駄目です、受け取れません!」

 その意味を察した私が戻そうとするのを、彼は許さない。

「お前が受け取ってくれないのなら、そんなものはあの湖の中にでも捨ててしまうがいい。だが、その前に俺の話を聞いてくれ」

 私はそれを握りしめたまま、中途半端な顰め顔を彼と見合わせる。そのままディクリド様は頬の痛みも感じさせず、真っ直ぐにこちらを捉えて打ち明けた。