魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「あんまり……美味しくないなぁ」

 鼻がツンとし、どこかしょっぱ()だけ強いサンドイッチを口に運び、もそもそと噛み締める。それが余計に別れの実感を湧かせ、体の中に染み込ませていった。

 寂しい――。しばし、背もたれに身体を預け、涙が零れないように両手で顔を覆う。

 こんなことでは駄目だ。これからは私ひとりでこのお店を管理し、ルシルにも色々な手伝ってもらって、もっとこの領地の人たちのために力を尽くしていきたいと、そう思ってるのに……。

 今日だけはなにもする気が起こらず……そのまま脱力していた時、涼やかな呼び鈴の音が聞こえた。誰かが玄関に来ているようだ。私は仕方なく涙を拭うと、階下に降りて扉を開く。

 ずいぶんと背の高い人のようで、扉の小窓からも胸元しか見えない。立派な身なりだし貴族の方かも知れないと思い、気分を害さないうちにと私は扉を開ける。

「どなたでしょう……」