「感謝する……! 未だ皆、退路を切り拓け!」
自分の予想を超えてくれた――若き勇者の出現に鼓舞されディクリドは気力を奮い起こすと、一気に部隊を後方へと雪崩れ込ませた。それと同時に、周囲に命令を下す。
「俺に付いてくるものは少数でいい! ランツ子爵の部隊と合流し、未だ動揺している敵軍を徹底的に叩いたのち、砦に引き返せ! 武運を祈るぞ!」
そして今度はディクリドの方がその身を囮にして、敵軍の統率をさらに乱し、その後方――マルディール王国側へと駆け抜けてゆく。平原は次第に形を変え、鬱蒼とした森林地帯へと変わっていた。
遠目にフィトロの姿を見て、後のことは頼むと念じながらディクリドは我こそが首級をあげんとする敵兵たちを引き連れて、なりふり構わず駆けた。それはある意味では爽快な気分ですらあった。
最低限の役目は終えた。ここからは、生き残るための争いであり――辺境伯としてのディクリドの戦は、この時点で終わりを告げていたのだ。
自分の予想を超えてくれた――若き勇者の出現に鼓舞されディクリドは気力を奮い起こすと、一気に部隊を後方へと雪崩れ込ませた。それと同時に、周囲に命令を下す。
「俺に付いてくるものは少数でいい! ランツ子爵の部隊と合流し、未だ動揺している敵軍を徹底的に叩いたのち、砦に引き返せ! 武運を祈るぞ!」
そして今度はディクリドの方がその身を囮にして、敵軍の統率をさらに乱し、その後方――マルディール王国側へと駆け抜けてゆく。平原は次第に形を変え、鬱蒼とした森林地帯へと変わっていた。
遠目にフィトロの姿を見て、後のことは頼むと念じながらディクリドは我こそが首級をあげんとする敵兵たちを引き連れて、なりふり構わず駆けた。それはある意味では爽快な気分ですらあった。
最低限の役目は終えた。ここからは、生き残るための争いであり――辺境伯としてのディクリドの戦は、この時点で終わりを告げていたのだ。



