魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「……なんだ、その瞳は」
「俺自身は人より少しばかり図体がでかいだけの、どこにでもいる男にすぎん。だが幸運なことに周りの心ある者たちに教えてもらえた。まずはなによりも自分の弱さと戦うべきだとな……。貧富や境遇、見た目や能力、世には様々な優劣が存在し、武力による強さなどというのは、その中のひとつ程度のものでしかない。お前は誰かに否定されたから、自分のものさしのなかから他のすべてを除き、力のみで上に立とうとしたのだろう」
「気に入らんな。それのなにが悪いというのだ……!」

 ファルガーが表情を歪め、目を血走らせる一方で、ディクリドは剣を落ち着いた表情で剣を真っ直ぐに構える。

「悪いかどうか、それは俺が判断できることではない。だが、俺の強さはお前と同じ類のものではない。多くの人々に触れて色々なものを託されながら、共に歩み培ってきた強さなのだ。いわば、俺自身の刃にはハーメルシーズ領民すべての願いが込められている」
「ぬ……」

 ファルガーの獅子面に生えた鬣が急に逆立つ。まるで、なにか出会ったことのない巨大な存在と相対しているかのように。ごくり、とその喉が鳴った。
 だが、それを恥とするかのようにファルガーは獰猛にディクリドを睨み付け、二刀を振りかぶる。