魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「ふん……そのような小手先の攻撃が届くものか! それよりも、自分の姿を鏡で見てみるがいい。“不滅の金狼”が今や血に塗れて道化のようぞ。赤血のふたつ名を譲ってやろうか?」
「必要ない。今日限り、その名はこの世から消えるからな……」

 体中を切り裂かれつつも、ディクリドのその瞳に畏れの色はまったくない。
 もちろん彼の胸中にも、この状況で容易く相手に勝てるなどという驕りはない。だが、この男は自らの正しさを証明する為だけに戦っている。その強さは、人の屍をひたすら積み上げて高みに手を伸ばすような孤独な強さだ。自らだけを頼みにし、ひとりで戦い続けていた男の精神力に感服しながらも――彼が決して持ち得ないものをディクリドはずっと背負って戦って来た。

 いや、背負って来たのではない。支えられてきたのだ――。

 今も後ろで、多くの仲間が自分の戦いを固唾を飲んで見つめ、あるいはあらん限りの声を振り絞り、声援を送ってくれている。
 そして、後ろには自分の帰りを待つ人がいる――。

 その事実が、ディクリドから敗北の恐怖を完全に拭い去り、凪いだ金色の瞳が、ファルガーを怯ませた。