魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 我ながら驚きを隠せずに椅子を蹴倒すと、私は机の上で魔石と接続し、魔力を吸って端から輝き始めた術式盤を覗き込んだ。術式が誤り不成立な場合は魔力は消費されず、このような現象は表わさない。

 その新たな魔術が完全に起動すると、術式盤から漏れ出した魔力の光は粒となって離れ、やがて空中の一点に光の玉を作って制止する。

 その色は……神秘的で、どこか心をしんと静めていくような、薄い“紫”。
 ぼんやりと明滅するそれは、私がおそるおそる指を伸ばすと、仄かな温かみを感じさせてすり抜けた。

 私が試みた新魔術の効果――それは、魔術に使用する魔力そのものを、器たる魔石から抽出するというものだ。

 魔力とはいったいなんなのか……それは今をもって謎とされている。
 一説によると、この世界を形作る際に神々が使った力の残滓だとか言われているが……それにしては、自然に保有している存在が少なすぎる。それが確認されているのは、人間たちの中に突然変異的な確率で生まれてくる魔術師と呼ばれる存在か、もしくは土中で魔力が結晶化した魔石、それのみだ。

 そして、それの魔術以外への用途も不明だ。実際にこうして魔力そのものを抽出したところで、それがなんに使用できるかは私にも分からない。