魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 ザドが父親を諫めたが、これでは、自らで私を虐げたことを自白してしまったようなもの。事態を見守っていた裁判長が、額にやっていた手を外すと、ガツンと木槌を打つ。

「お前たち……そこいる者たちを速やかに拘束せよ。被告ではなく、原告の方をだ」
「ば、馬鹿な!」

 おずおずと迷いながら、警備兵たちが父たちを押し包む。その言葉に取り合わず、裁判長は高らかに宣言した。

「先程の決定を改め、本裁判では原告の訴えを棄却するものとする! 王国法務局に所属する検察官をファークラーテン家の本宅へと差し向け、然るべき調査の後に、再び裁判が執り行われるかは決まることになるじゃろう。それまで同家の者は監視付きの上、屋敷から出ることを禁ずる。サンジュ・ファークラーテンのみを覗いてな」

 その言葉に、私はばっと頭を上げ、裁判長はこちらに頷きかけた。

「王国法務局の名において、新たなる庇護者の下で、望んだ生活に戻ることを許可しよう。姓の変更を検討することもな。貴殿が真実を述べている限り、もう生家に戻る必要はないということだ」
「……あ」