グローバス侯爵がかっかっと愉快そうに笑い、ソエルがその言葉を継ぐ。
「私は妹の行動力と苦しみの深さを見誤っていた。妹は父から好色な老人の玩具にされるなどと聞かされ、今少しのところで世を儚んで姿を消してしまった。……私の不明だ。計画を誰かに察知される危険を冒してでも、お前に解放の日は近いと伝えておくべきだった……」
ソエルは目を瞑り、私に無言の謝罪を向ける。それをどう受け取ればいいのか分からず、私はただそれをじっと見つめた。そしてそこからは知っての通りだ。
「僥倖だったのは当時、辺境に住まうハーメルシーズ伯がたまたま王都に出向いていたことです。彼は偶然にも、川に飛び込んで命を断とうとした妹を救い、身の上を憐れんで自らの領地へと匿ってくれた。そのことには感謝のしようもありません」
そして次は、ディクリド様に頭を下げる。
私は複雑な気持ちで兄のその行動を見ていた。今まで私はずっとソエルのことを、プライドが高く、冷えた鉄のようにかたくなで、冷徹な心しか持たない存在だと決めつけていた。
「私は妹の行動力と苦しみの深さを見誤っていた。妹は父から好色な老人の玩具にされるなどと聞かされ、今少しのところで世を儚んで姿を消してしまった。……私の不明だ。計画を誰かに察知される危険を冒してでも、お前に解放の日は近いと伝えておくべきだった……」
ソエルは目を瞑り、私に無言の謝罪を向ける。それをどう受け取ればいいのか分からず、私はただそれをじっと見つめた。そしてそこからは知っての通りだ。
「僥倖だったのは当時、辺境に住まうハーメルシーズ伯がたまたま王都に出向いていたことです。彼は偶然にも、川に飛び込んで命を断とうとした妹を救い、身の上を憐れんで自らの領地へと匿ってくれた。そのことには感謝のしようもありません」
そして次は、ディクリド様に頭を下げる。
私は複雑な気持ちで兄のその行動を見ていた。今まで私はずっとソエルのことを、プライドが高く、冷えた鉄のようにかたくなで、冷徹な心しか持たない存在だと決めつけていた。



