魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 遅れて、法廷の方に姿を見せたのは、なんと遠方の地で領主代行に勤しんでいるはずの上の兄、ソエル・ファークラーテンだった。

 だがどうして……上の兄であるソエルが、ディクリド様と一緒に現れただけではなく、決着のついた裁判の締めくくりをわざわざ邪魔するのか……?
 私と同様の疑問を持った父が、悪鬼のような形相で、兄を問い詰めた。

「ソエルゥ……なぜ貴様がこの場所に居るのだ。貴様は新領地の統括を手掛けこちらにはしばらく戻れないと申しておったではないか……。もしや、ここにグローバス侯爵を連れて来たのも、お前なのか?」
「…………はっ」

 ソエルは疑念を抱いた父の質問を、乾いたため息で無視すると、小脇に抱えていた冊子を手に、法廷の中央に進み出る。
 そして、淡々と話し出した。

「裁判官、そしてこの場に御列席の皆様方に聞いていただきたい。私、ソエル・ファークラーテンは……父、ウドニス・ファークラーテンを始めとした我が一家、そしてそこで働く者たちが長い間妹を虐げて来たことを告発します。高等な教育を与え、衣食住を保障しているという言い分を盾に、幾日もろくに眠らせることなく酷使し、苦痛を与えたその記録を、できうる限りの詳細さで私はここにつけている。これを検め、妹に与えられた傷と照らし合わせば、そのことが真実だと分かってもらえるでしょう。それほど鮮明ではないが、ここには、虐待の場面を映した録魔晶もいくつか同封している。加えて屋敷の彼女の部屋を調べ、使用人たちに調書を取ればいくらでも証拠は出てくるはずだ」