魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 ただの接触に過ぎないはずなのに、体中が歓喜し、痺れるような快感が広ってゆく。

 えもいわれぬ柔らかい感触と、恍惚とした気分に思わず声が漏れ、半開きになった口から、彼の熱い吐息が流れ込んだ。お互いに手探りで少しずつ、息を止めては視線で気持ちを確認しながら、長いキスは続く……。

 家族の温もりを持たざる私と失いし彼。きっと私たちの胸にはいつでも寂しさがあった。それを受け止めてくれる相手を見つけたことで、私たちは全力で求め合い、行為はだんだんエスカレートしてゆく。

 でも駄目なのだ、これ以上は――。

 行き着くところまで行ってしまいそうな気がして、私は彼の胸を突き放すように押しやった。唾液がつっと口を伝い、恥ずかしさに口を押さえ目を逸らす。

 心臓が、信じられないくらい激しく脈打っている……。

 荒い息遣いで見合った後、私たちは互いを思い遣って目を伏せた。

「すまなかった。俺から終わらせるべきであったな……」