「しかし、それではここにいるお前をないがしろに――」
なおも私を気遣い、そう唱えようとした口を私は指で塞いだ。
不躾な行為だけれど、彼がそんなことを理由に、人を責めたりしないということはもうわかっている。
「そうさせて下さい。私はディクリド様のことをすべて知りたい。私はあなたに、これまでのことを聞いてもらって……とても救われましたから」
初めて出会った時、彼にそうしてもらったことが私にとって、わだかまっていた人への不信感や、行き場のなかった苦しみを吐き出す契機になった。だからこそ、ハーメルシーズ領に来れた時、リラフェンや他の人たちをあんなにもすんなりと信じることができたのだ。
それと同じことができるとも思わないし、それが今の彼に必要なのかも分からないけれど……もし、彼に自分の中に押し込めたまま、誰にも明かせない亡くした人に対しての感情があるのであれば、その受け皿になってあげたい。
だから私はあえてこう告げた。
「私の中の家族という繋がりを、あなたの記憶で上書きして欲しいんです」
「…………!」
なおも私を気遣い、そう唱えようとした口を私は指で塞いだ。
不躾な行為だけれど、彼がそんなことを理由に、人を責めたりしないということはもうわかっている。
「そうさせて下さい。私はディクリド様のことをすべて知りたい。私はあなたに、これまでのことを聞いてもらって……とても救われましたから」
初めて出会った時、彼にそうしてもらったことが私にとって、わだかまっていた人への不信感や、行き場のなかった苦しみを吐き出す契機になった。だからこそ、ハーメルシーズ領に来れた時、リラフェンや他の人たちをあんなにもすんなりと信じることができたのだ。
それと同じことができるとも思わないし、それが今の彼に必要なのかも分からないけれど……もし、彼に自分の中に押し込めたまま、誰にも明かせない亡くした人に対しての感情があるのであれば、その受け皿になってあげたい。
だから私はあえてこう告げた。
「私の中の家族という繋がりを、あなたの記憶で上書きして欲しいんです」
「…………!」



