「――待って!」
気持ちを切り替え外に連れ出そうとしてくれた彼を、しかし私は思わず引き留めていた。
「あ、あの……」
「どうした?」
訝しがるディクリド様の瞳を私はこわごわと覗き込む。
こんな強い人に、少し昔の話を聞いたくらいの私が、分かった風になにを言えるというのだろう。話を聞いて苦しみを分かち合おうだなんて、なんて浅くおこがましい考えだったのだと、後悔は尽きない……。
でも……彼が、私を選んでそんな大事な話をしてくれたというのなら、私は彼に対してなにか伝えるべきことがあるのではないかと思う。
私はきっと、ディクリド様ほど辛い経験をしていない。なにより物心ついたころから私には、大切と言えるような人は居なかった。ずっとひとりで痛みに耐える毎日は確かに苦しく、この世で一番自分が不幸なのだと思うようなときもあったけれど、それはおそらく、違ったのだ。
気持ちを切り替え外に連れ出そうとしてくれた彼を、しかし私は思わず引き留めていた。
「あ、あの……」
「どうした?」
訝しがるディクリド様の瞳を私はこわごわと覗き込む。
こんな強い人に、少し昔の話を聞いたくらいの私が、分かった風になにを言えるというのだろう。話を聞いて苦しみを分かち合おうだなんて、なんて浅くおこがましい考えだったのだと、後悔は尽きない……。
でも……彼が、私を選んでそんな大事な話をしてくれたというのなら、私は彼に対してなにか伝えるべきことがあるのではないかと思う。
私はきっと、ディクリド様ほど辛い経験をしていない。なにより物心ついたころから私には、大切と言えるような人は居なかった。ずっとひとりで痛みに耐える毎日は確かに苦しく、この世で一番自分が不幸なのだと思うようなときもあったけれど、それはおそらく、違ったのだ。



