魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 ほんのわずかだが、父たちが、このハーメルシーズ家のものとして果たそうとしていたことが、見えた気がして……ディクリドは何年かぶりに家族が眠る墓碑へと赴いた。

 抱えていた花束を捧げると、父から受け取って以後、着けることのなかった勲章を左胸に取り付け、深く一礼する。

「父上、叔父上……そして、母上。俺は生涯をこの領地に捧げることを改めて誓います。いつか、あなたたちのように、立派に次代の者へ未来を引き継げるその時まで。ですからどうか……安らかに」

 ディクリドにとっての本当の継承はここに終わり……そうして、彼はこの領地と共に送る長い人生を歩み出したのだった。