魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 後に自らの腹心となるフィトロと、その義理の妹リラフェン。彼らは最初から心を開いてくれたわけでは無かった。だが、酷い境遇に置かれていたにもかかわらず、彼らは少しずつ気力を取り戻すと、お互いの将来のために努力し始めた。そうした心の再生がわずかな慰めになり、ディクリドは事あるごとに虐げられている人々を助け、城に連れてきた。

 そして彼らを見守るうちに、このまま自暴自棄な行いを続けていていいのかと自らに問うようになった。
 なんのために今、自分は生かされているのか。家族が自分にしてくれたことはなんだ。母が自らの命を断ってまで、ディクリドにさせたかったことはなんだったのか……。

 思えば父母も、叔父も、皆自分の役割に不平不満を漏らしたことなど一度もなかった。彼らはどんなに大変だろうと、忙しかろうと進んで自らの役目に臨んだ。その姿を幼い頃のディクリドは憧れを持って見つめ、いつか自分も彼らのようになりたいと願ったはずだ。いつだって彼らの存在はディクリドを勇気づけ、目指すべき標になってくれていたではないか。

(こんな俺の姿を、母上たちが喜ぶはずがなかった……)