魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 先に逝った父たちのことが恋しいのだ……そう察し、ディクリドは以前よりずっと細くなった母の身体を抱き締めた。昔とは逆で、体を包み込む側になってしまったことに時の流れを感じ、今は亡き家族たちを思うと寂しく、目を伏せる。

「ごめんなさい、ディクリド」
「…………?」

 唐突になされた謝罪の意味が分からず、ディクリドはゆっくりと目を開いた。母が泣いている。どうしてですかと尋ねようと口を開くが……声の代わりに出てきたのは。

「……ごほっ……?」

 紅い――――血の塊だ。
 次いで戦を思い出す鋭い痛みに下を見下ろせば、腹部に突き刺さった短剣が見える。錆びた味が口いっぱいに広がった瞬間、ディクリドの中の獣が急速に目を覚ます。魔術が彼を狼の姿に変えてゆき、大きな傷が理性を奪い去る。牙と、爪が伸びる。

「ぐ、ぅ……母上、ナゼ……」