魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 見え透いた挑発にディクリドは猛々しく吼えた。
 これまでハーメルシーズ軍全体に向いていた怒りが明確な対象へと絞られ、ディクリドは猛然と反撃を行う。それでも、ファルガーという指揮官はやすやすと攻撃を受け流し、ディクリドはただの一撃すら入れることが叶わなかった。

「ははは、後数年遅ければ勝負になったかもしれぬが……戦場に出るのが早すぎたな! 家族の元へ逝くがいい!」

 ファルガーの容赦のない一撃が、鋭く頭上から振り下ろされた。

 ――もっと自分が早く、強く成長出来ていたら……。

 死の恐怖と、敵への憎しみ、不甲斐ない自分への怒り――様々な感情が一気に膨れ上がり、そこでディクリドの理性は弾け飛んだ。

「ウオオオオォォォッ!」
「むっ……!」

 獣じみた咆哮を迸らせ振るった一撃が、尋常でない速度で迫ろうとしていた剣を横薙ぎに弾き飛ばす。
 それは相手の剣の片方を破壊し、胸甲を切り裂いて大きな傷を刻む。獅子面の男の口から、忌々し気な舌打ちが漏れた。