「イデルは……大規模な部隊を分散して周到に隠し、合流直後前触れなく攻め入ってきたマルディール軍の兵士たち相手に勇戦して散った。数倍もの敵を押しとどめ、我が軍が態勢を整える猶予を作ってくれたが、怪しげな魔術を宿した敵将に及ばず討ち取られたという。私も今から前線に向かい、あやつの代わりに軍の指揮を執らねばならん」
「そ、そんな……。では俺も……」
「ならん。お前は当家の跡取りとして、儂にもしなにかあった時、この領地を守ってゆくのだ」
「ですが……!」
手のひらに爪が食い込んだが、それ以上は言えなかった。
父であるリエフは統治能力には優れ、民の人気も高いが、決して戦が得意であるとは言えない。だが、それを理由に覚悟を前にしてディクリドが彼を止めるのは、父に対しての侮辱に他ならない。
ぐっと気持ちを押し殺し、ディクリドがどうにか絞り出せたのはたった一言だけだ。
「……御武運を」
「ああ。お前が立派に育ってくれたおかげで私は心置きなく戦いに赴ける。どうか、グレイアと共に民を安心させ、この領地の平穏を守ってやってくれ。頼んだぞ」
「リエフ様……どうか御無事で」
「そ、そんな……。では俺も……」
「ならん。お前は当家の跡取りとして、儂にもしなにかあった時、この領地を守ってゆくのだ」
「ですが……!」
手のひらに爪が食い込んだが、それ以上は言えなかった。
父であるリエフは統治能力には優れ、民の人気も高いが、決して戦が得意であるとは言えない。だが、それを理由に覚悟を前にしてディクリドが彼を止めるのは、父に対しての侮辱に他ならない。
ぐっと気持ちを押し殺し、ディクリドがどうにか絞り出せたのはたった一言だけだ。
「……御武運を」
「ああ。お前が立派に育ってくれたおかげで私は心置きなく戦いに赴ける。どうか、グレイアと共に民を安心させ、この領地の平穏を守ってやってくれ。頼んだぞ」
「リエフ様……どうか御無事で」



