正味一分もなかっただろうその変化は終わり、瞬く間にディクリド様は元通りの姿へと戻ってしまった。私は撫でくりまわしていた形のままの自分の両手と、せっかく整っていたのがぼさぼさになってしまった彼の髪を見てハッと我に返る。
「あ……ご、ごめんなさい! 私、いくらいいと言われたからって夢中になって……」
「構わんさ。くすぐったさはあったが、悪い心持ちでは無かったからな」
彼の指から流れた血も止まっていたが、薄っすらと手首のレース飾りに残る血の跡が、先程の出来事が夢ではないことを私に知らせた。
ディクリド様は手櫛で髪を整えると、壁に背中をもたせ掛け、肩を震わす。
「ふふふ……お前といると、ついなんでも話したくなってしまう。すまんな、お前とて祭りに混じり、皆と喜びを分かち合いたいだろうに」
話の終わりを予感し、行っていいぞ――そう言われるのが怖くて、私はつい声を荒げた。
「いいえ! それよりも私は……ディクリド様の話を聞いていたいです。どんなことでも、あなたのことなら、知っていたい……」
「あ……ご、ごめんなさい! 私、いくらいいと言われたからって夢中になって……」
「構わんさ。くすぐったさはあったが、悪い心持ちでは無かったからな」
彼の指から流れた血も止まっていたが、薄っすらと手首のレース飾りに残る血の跡が、先程の出来事が夢ではないことを私に知らせた。
ディクリド様は手櫛で髪を整えると、壁に背中をもたせ掛け、肩を震わす。
「ふふふ……お前といると、ついなんでも話したくなってしまう。すまんな、お前とて祭りに混じり、皆と喜びを分かち合いたいだろうに」
話の終わりを予感し、行っていいぞ――そう言われるのが怖くて、私はつい声を荒げた。
「いいえ! それよりも私は……ディクリド様の話を聞いていたいです。どんなことでも、あなたのことなら、知っていたい……」



